第六日  2003/8/21 ベルゲン(ノルウェー)
視察目次へ戻る
前日へ 翌日へ

行程

ストックホルム  08:20発  SK1499
オスロ  09:15着
 11:10発  SK313
ベルゲン  12:00着

事情調査内容  午前は移動
 The Derectorate of Fisheriesを訪問(午後)
担当者 Mr.Dag Paulsen(First Adviser)
●養殖漁業の現状と今後の課題について

宿泊ホテル  FIRST MARIN HOTEL
 ファースト マリン ホテル
 п@47-53-05-15-00


水不足のない気象が、養殖を支える

ストックホルムからオスロを経由して、目的地のベルゲン市に向かう。

(視察も後半に、飛行機での移動にも疲れの色は出ていない。乗り換えで立ち寄ったオスロの空港で)

ベルゲンはノルウェー第二の都市であるとともに、最大の商工業都市でもある。
中世以来、海洋文化を育んできたベルゲンでは、人と自然と産業が共存するためのノウハウと、美しい自然を守る精神が、長い歴史の中でたくわえられて来た。
市の北部に遺された中世時代の木造の家並みは、ユネスコの世界遺産にも登録されている。環境政策と都市計画は高い評価を受け、2000年度の欧州文化都市にも指定されている。

学ぶことの多い都市であり、視察先に選んだことは間違っていなかった。


「ノルウェー」は、面積38.6kuと日本とほぼ同じ、人口約455万人と北海道より少ない。
主産業は石油、水産、海運業で、特に石油、天然ガスは、サウジアラビア、ロシアに次いで世界3位の輸出国である。石油産業は国際的な価格の変動や輸出先の動向に大きく影響を受けるため、現在は石油産業からの脱却が大きな課題である。
国内経済は、GDP成長率は近年2%程度、失業率3%程度、政府財政は財政赤字に見舞われたのは過去15年間で3年のみと、緊縮財政政策を堅持している。

(ベルゲンの空港に到着。予想通りの雨だったが、玄関先にはバラの花壇があり、どことなく日本の地方空港を思わせる)


「ベルゲン市」は、ノルウェー第2の都市で、人口23万人程度、その地形は西ノルウェー特有のもので山が海岸線まで迫り、フイヨルド観光の拠点であり、養殖漁業の拠点でもある。
海岸線の狭い土地に木造の家が密集している。

(写真は、山の中腹まで家がびっしりと張り付くベルゲンノの街)

山肌にも白い家が多く見られる。道幅が狭いため一度火災にあうと家並みは全て焼き払われてしまう。特に、ハンザ同盟時代の建物があるブリイゲン通りは100年に一度の割合で大火にあっている。
また、天候もメキシコ湾流の影響を強く受けるため、頻繁に雨が降る。一年のうち3分の2は雨の日である。だから、この町では洗濯物を外に干すことは何の意味もない。

1年を通していつでも雨が降っているといっても過言ではない。この豊富な淡水がサケ・マスの養殖を支えているのである。

漁業振興は、国の都市政策でもある

ノルウェーの漁業省に付属する漁業局を訪ねた。

(写真は、漁業局。行政庁舎とは思えないモダンな建物だ)

当組織は、103年の歴史をもつ。1946年、国に漁業省が出来てからはそこの下部組織として養殖、資源管理、ライセンス付与、水産試験研究などを担当する、まさにノルウェー水産業を支える中心機構として役割を果たしてきた。
ノルウェーにおける水産行政の位置付けは極めて明快だ。一つは、小さな国が石油に次ぐ輸出資源を確保することで国として成り立っていくこと。もう一つは、都市政策だ。国民が故郷を離れ、都市に集中してしまえば地方の過疎化が進んでしまう。そうならないように、地域産業としての漁業振興を国策として様々な観点から支援していくというものである。

言いかえれば漁業局活動の地域展開は、地方分権を促進する上で欠くことの出来ない、地域における経済基盤の強化を国としてサポートするという意義を併せ持つのである。


約束の時間より少し早くついたため、レクチャーを受ける予定の会議室では、直前まで幹部会議が開かれていたようだ。ほとんどの幹部がノーネクタイ。現場と本部を行き来する姿からは、国の役人という印象が少ない。

(写真は、ビヨーネ専門官の話に耳を傾ける視察団員)

対応してくれたのは、広報担当官のダーグ・コウルセン氏と、養殖漁業の専門官ビヨーネ・オービック氏だ。

(写真は、ダーグ広報担当官)

水産加工品輸出において世界一を誇る中国からの視察団を午前中に受け入れたという。ノルウェーは、水産漁獲量からいえば日本の半分程度であり、世界の中でも飛びぬけているわけではない。だが、輸出量では生産の9割を輸出しており、中国に次いで世界二位の地位を維持している。そしてサケマスの輸出先は、EU諸国が大半を占めるが単一国では、日本が第1位である。
四方を海に囲まれている日本としては、天然物の素晴らしさをアピールする意味からも、今後とも衛生管理をしっかり行うことを前提に、対策をしなければならない課題だ。


北海道のホタテも12年前に貝毒が出たということでEU、フランスから輸入禁止措置を受けた。漁業者にとって、大変なダメージだったことは関係者なら誰でも知っていることだ。
今回参加したメンバーを中心に、海洋モニタリングの予算措置を道に認めさせる議会活動をおこなってきた結果、昨年11月にフランス輸出解禁を実現できたことは記憶に新しい。

(上の写真右の滝口道議の地元室蘭も、ホタテは重要な産業だ)

今回感じたノルウェー政府の、「輸出振興により、外貨を稼ぐんだ」といった貪欲さは、今後日本としても、そして水産業の中心を担う北海道としても採り入れていかなければならない課題である。

是非、提言をしていきたい。

(写真は、ベルゲン・北海道両地域の検討をたたえ合い、固い握手をしているところ)


前日へ 翌日へ