第四日  2001.4.8  ミュンヘン
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即効性のある景気回復策

北海道は、豊かな緑をはじめ数多くの魅力ある自然に恵まれている。
これらの自然を損ねることなく守り抜くことを通じて、同時に観光資源として活かしていくことが求められている。
観光産業の振興が当面、北海道の景気回復を支える即効性のある方策だからだ。
我々の視察目的のひとつは、「歴史」と「自然」を前面に出し、世界の観光客を呼び込んでいるヨーロッパの実例に触れることでもある。そこから得たものを今後の政策に反映し、北海道経済活性化に役立てたいと願うからだ。

からくり時計で有名なミュンヘンの新市庁舎。「新」といっても、つくられたのは19世紀末で、建設には30年もかかっている。

行政の建物自身が、歴史的建築物としてシックな都市計画に一役買っている。

しっとりと落ち着いた街、ミュンヘン

ミュンヘンは、世界の百万都市の中で、例を見ないほど、しっとりと落ち着いた街である。大二次世界大戦でその大半が被災したが、見事なまでの古都復興を成し遂げている。
しかも都市再生には、自然と人間というコンセプトが随所に見られる。

例えば、屋外広告物の徹底した規制、街の景観を損ねる高層建築物の禁止、人々の心をなごませる中心部の広大な公園、渋滞解消のため地下鉄郊外駅に駐車場を設けてマイカーの都心部乗り入れを抑制するパークアンドライド政策の推進などである。

写真は、市内を流れるイザール川。護岸工事もなく、うっそうとした河畔林が見られる。

大二次大戦でほぼ壊滅状態になった市内も、ヨーロッパ独特のカーブを描く古都として、見事に復興している。

市民が主役の街づくり

今回は訪れなかったが、ミュンヘン近郊のロマンティック街道は、世界の観光客を魅了している。
しかし、そうなるには相当の努力があったという。まず、ありとあらゆる観光マップにロマンティック「街道」の標示を行った。それでいてけばけばしさはなく、深い緑に包まれて中世の古城が、訪れる人をタイムスリップさせるのだ。
おそらく世界中の旅行代理点に直接的間接的に売り込んでいったのだろう。その結果が実り、多くの観光客呼んでいる。

そこで思い出したのが、今回の視察初日のアムステルダム空港だ。
北海道とオランダの直行便が結ばれ、まもなく増便も予定されている。しかし、アムステルダム空港には、北海道のかんこうをPRする広告一枚貼られていない。日本企業の広告はあるにもかかわらずである。
これでは新千歳からアムステルダムに次々と観光客が運ばれても、その逆はうまくいかないというのもうなずける。

この次、この空港を訪れる機会があったとしたら、そのときには北海道への観光客誘致キャンペーンがしっかりとおこなわれているよう、帰国したら直ちに働きかけたい。



聞いてはいたが、ミュンヘンの都市計画は市民を主役として進められている。ウィーンもそうだったが、とにかく公共交通が張り巡らされている。しばらく滞在して、その便利さを体験したいという気持ちにさえなる街だ。

歩道は広く、自転車専用道もしっかりと整備されている。

市内には、いたるところに歩行者専用道路がある。さすかは、街の中心部に世界で初めて歩行者天国をつくった街である。

石畳の道路はセンターがくぼんでいて、排水溝が点在している。これも、まだトイレが中って頃の中世に、朝になると桶に入った排泄物を窓から道路に投げ捨て、中心のくぼみを活用して水で流した習慣の名残りなのだろう。

幅の広い歩道とは、さらに区別された自転車専用道路が、ほとんどの道で整備されている。


街中には、景観に配慮しつつ、わかりやすい案内標識が点在している。

景観に配慮してか、広告塔に集中している各種イベントポスター。しかし実際には、街角に違法と思われる掲示物も散見される。


世界ではじめてつくられた街の中心部の歩行者天国では、各種大道芸人が独自の文化を広めている。

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