チューリッヒ(5月21日)
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欧州でも有名なアルターバッハの川づくり

北海道四人組は、何でも珍しい

橋も自然と調和している

州政府のエガーベルガさん

川辺に降りて、実際を視察
  昨夜のうちに我々、国境を越えオーストリアのザルツブルクに入っている。相変わらず皆、元気だ。ザルツブルクはモーツァルトの生家があるところ、あるいは映画「サウンドオブミュージック」の舞台となったところで知られている。しかし我々の目的は、今日も、この地における環境保全の実態視察だ。例によってミーティングの後、ロビーで約束の州政府担当者が現れるのを待った。

治水対策とアルターバッハ
 自転車に乗ってやってきた州政府のエガーベルガさんは、見るからに、自然が好きという感じの人。我々はワゴン車のため、地図を見ながら集合場所を決めてそれぞれ出発した。目的の小橋についた我々は、場所を間違えたのではないかと自分たちを疑った。それというのも、目の前の川は、人工的に作り替えたという代物では、どうみてもないからだ。ごく自然に蛇行し、野生の草木が生い茂り、魚が泳いでいるではないか。川底も自然そのものである。
 ほどなくやってきたエガーベルガさんは、にこにこ笑いながら、修復前の写真を見せてくれた。そこには、川底に平らな石を敷き詰め、上流から一直線にのびた運河のような「川」が写っている。
 アルターバッハは、ザルツブルク市の北部を東から西に流れる小川で、途中でセルハイターバッハという小川と合流している。バッハとは小川という意味だ。小川とはいえ、山地を含み勾配も急なところがあり、洪水の被害も昔から絶えない。そこで1920年代から治水工事が行われてきたが、機能を重視し、環境にはまったく配慮しないものであったという。
 その後、環境問題についての関心が高まる中で、1986年には生態系や景観に関する大規模な調査が行われたようだ。これらの反省や調査にもとづき、1988〜1994にかけ、アルターバッハの川づくりが手掛けられたのである。
 さらに現在は、もう一方のセルハイターバッハの川づくりが進められている。セルハイターバッハは上流から工事が進められているために、アルターバッハとの合流点は、修復前のセルハイターバッハと修復後のアルターバッハの違いがはっきりと目に見える。
 治水という観点から、修復の限界について質問した。エガーベルガさんは、苦笑しながら、@川底に敷き詰めていた石畳を、修復後、川沿いに堤防のように埋めてあること、Aこの手法は自然保護団体の一部からは、「見せかけに過ぎない」と反対されていること、などを説明してくれた。また、本来的にはもっと幅広く川の周辺の土地を買収し修復するべきだったが、一度民間に手放した土地の価格が高く、再取得に莫大な費用がかかり不可能だったことなども、説明してくれた。
 我々は、一度壊した自然を元に復元することの困難さを痛感するとともに、それらをのりこえつつ、川づくりを進めるエガーベルガさんら関係者の努力に敬意を表しつつ、この地を去った。
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