第九日  2001.4.13  ミラノ
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最後の訪問地、ミラノも快晴であった。一部を除き、好天に恵まれた視察の旅だったといえる。
商業都市ミラノが抱える都市問題

政治の中心がローマなら、ミラノは商業の街といえる。
今やフランスのパリと並んで、世界のファッション界をリードする確固たる地位は、自他ともに認めるところだ。

勢い、中心部の地価及び物価は高騰し、市民は郊外へと移り、かつて160万だった人口は、137万人と減少してしまった。

イタリア各都市は、人口問題では複雑な事情を抱えている。
職を求めて都市部への流入が止まらず、そのことがホームレスを生み出し、治安の悪化を招いている。反面、ミラノのようなドーナツ化現象に悩む都市もあるのだ。

市内中心部の渋滞問題は、他の都市と同様、解決されたことのない課題となっている。

ミラノには三つの環状線がある。仮にこれらを一号線、二号線、三号線と呼ぶことにする。
一号線と二号線は、中世城壁の跡地である。
渋滞を解消するため、かつて、一号線内部への公共交通以外の乗り入れを規制したことがあった。

一号線と二号線にはさまれた地域は、1800年から1900年にかけてつくられた街並みである。当時は駐車場をつくるという視点はもちろんなく、エリア内にそんなスペースもない。ところが中心部への乗り入れが規制されたことで、この周辺がまさに麻痺状態になってしまったのである。

そんなこともあり、画期的な取組みといえる規制は廃止されてしまう。
それでも中心部の排気ガスがあまりにひどいため、月に一度の日曜日には、二号線以内は、ノーカーディが実施されるようになったという。

市行政の渋滞解消に向けた意気込みと、試行錯誤を見て取れる。

北海道の中心部・札幌にこのほど駐車スペース一台あたり四千万円という巨費が投入され、地下鉄駐車場がつくられた。国の直轄事業である。
ドーナツ化現象に悩み、都心部の渋滞問題に悩む札幌になぜ、あのような施設を作らなければならないのか。まるで自家用車を都心部に誘致しているようなものであり、市民道民の疑問の声は大きい。

ミラノの街が札幌に二重映しなった。

宗教と街づくり

この日は、奇しくも13日の金曜日。キリストが処刑された日のミサとあって、ミラノドゥオーモは、信仰者で大変込み合っている。

欧州各国の街が、訪れるものを圧倒する背景には、キリスト教という宗教を抜きにしては語れないものがある。
例えば、日本がまだ、竪穴式住居を作っていた時代から、彼らは巨大な大理石をエジプトから海上輸送する技術を持っていたのである。

数百年にわたって教会を建設する技術と情熱。このテーマは、次の機会に触れてみたいと、団員は語り合った。

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