HOSHINOTAKASHI

第五日  2010/8/25  
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行程

コペンハーゲン

事情調査内容   移動(午前)
  NGO代表訪問(午後)

宿泊ホテル   KALVEBOD BRYGGO
  Tel.45-33-389601
 

移動

NGO(午後)

  午前中の便で、私たちはスウェーデンのストックホルムから、デンマークのコペンハーゲンへと移動した。いよいよ海外調査も後半だ。
  NGO「環境ポイント・ウスターブロー」の代表ジェスパー・ハンセン氏を訪ねた。

調査項目は次の各点
@官民協同の基本的考え方を聴取
A現段階で抱えている課題を聴取
B将来に向けた取り組み方針を聴取


  滝口団長の挨拶に続き、さっそくハンセン代表から、NGOとしての活動内容が報告された。彼らは、ウスタブロー地区を対象として活動しており、次の2点を基本としている。題して「プロジェクト2100.NU」。ちなみに2100は地区の郵便番号をさしている。
@最新テクノロジーで環境負荷を軽減。
A新しい商品開発を行なう。
  NGO、行政、企業の協同関係について端的に伺った。このプロジェクトは、「NGO」「コペンハーゲンエナジー社(地域熱供給)」「ダニッシュ技術開発社」の三者が中心となり、市の担当者を交えて検討を重ねてきたという。環境に優しい市街地をつくるためには市街地自身が改革を進めることが重要だ。
  財政は、市及び国の予算、民間企業の資金などで成り立っている。住民、行政、企業と等距離にありながらプロジェクト全体をコーディネイトするのが、ハンセン代表のNGOと、私たちは理解した。
  地域内には1.400の住宅組合があるが、そのうち1.200の住宅組合が関与するようになった。積極的な住民参加を促すためには、@住民のメリットなどを情報提供する、A行動に関する危惧や恐怖を取り除く、の2つが重要だという。
  行政主導だと、どうしてもトップダウン方式になりがちだ。NGOがかかわることで、住民が「自分たちは環境の取り組みの先端を走っている」という自覚と共通理念を持つことが出来るようになるという。


  1年間で地域のCO2を10%削減することを目標として活動してきた。様々なコンサルティングを行ない、新しい機器を導入するなどといった内容をつうじて、実験的に10%の削減は可能だということを証明した。
地域熱煖房が99%普及しているコペンハーゲンでは、それ以上はかなり厳しい取組になる。それ以上のアイデアは市民に公募している現状にあるという。例えば、新しい交通機能の実施、洗濯物を干す手法などといった様々なアイデアなどだ。
  企業は環境に優しい新しい器具などの販売が促進されるメリットもある。有名人の起用で、広告宣伝でも上手く活用している。企業には懸賞を出すなどの取組もある。いいアイデアについては賞金もある。
  どれくらいエネルギー消費しているかわかるメーターを活用した診断を市民の協力のもとに実施した。企業からすれば、市民がより多く参加してくれれば、商品ニーズの把握が図れるので積極的に参加している。


  市民に熱を供給しているコペンハーゲンエネジー社熱供給源は何を活用しているのか?との質問には、同席をした同社の幹部から、「熱源は一つではなく複数。石炭による火力発電の排熱を利用している。他には地熱発電。風力発電の電気で温めて地域暖房の熱源としている」とのお答えがあった。また、石炭火力発電の排熱はどの程度のシェアを占めているのか?と伺ったところ、「ウスターブロー地区では50%石炭火力の排熱だと考えられる。これから市役所などとも連携して、持続可能なエネルギーへの転換を考えている」とのことだった。
  省エネについては、「お湯や水の使い方などで様々なキャンペーンを張っている。地域暖房はバイオ燃料化を図っている。電気に関しては風力発電。電気自動車の積極的導入。普通の自動車はエタノール燃料などへの他のエネルギーにシフトしている」とのお答え。
  民間会社という立場から、原子力発電についてどのように考えているか伺ったところ、「1980年に導入しないとの方針を国民と国が決めた。今も変わらない。そのような議論は現時点ではありません」ときっぱりお話しされた。
写真は、80%の住民がプロジェクトにかかわるウスタブロー地区


  蛇口に空気を入れることで、使用水量を低減できる機器について紹介を受けた。実際このキッドはお土産に戴いたので、興味のある方はご連絡をお願いしたい。350クローネ(約6千円)程度。2カ月で減価償却するという。これも環境ビジネス成功例であろう。実は翌日の市役所では、世界を相手に商売をしている企業も紹介されることとなる。
  環境重視と経済発展は、相反するという考え方から、いち早く発想転換したたくましい姿を、今回は垣間見ることが出来たわけだ。
  カーシェアリングの取組についても伺った。プロジェクトの一貫としてウスターブロー地区で実施しいるという。携帯電話で予約し、カードキーで解除するだけというから、非常に使いやすい。レンタカーと違い、自分が住んでいる地区に駐車場があるので必要なときにすぐ使えるようだ。もちろん車種は電気自動車である。
  環境ビジネスは北欧3国が突出しているが、その背景は?との問いには、「競争と協調がキーワード。同じ考えを持っているのかもしれない」とのことだった。


  NGO活動が先導している利点は?との問いには、「行政手法のトップダウンで上手くいくところもあるかもしれないが限界もある。NGOは、非常にオープンなのでみんな参加したいと考えているかもしれない」と。さらに、「社会の制度自体が硬直化していない。柔軟な社会だと思う。目標が一緒なら一緒にやれる。また、自分なりの自尊心を持つ方が多いかもしれない。個人営業主で年間80万円程度削減できたと自慢にもなっている。モダンな突破口を開いた人と新聞・雑誌で紹介された事例もあるんです」と笑いながらお答え頂いた。

  最後にハンセン代表から、「日本では同様の取組をできると考えているか?」と逆に質問を戴いた。これに対し、星野事務局長から、市民出資で風力発電システムをいくつも実現して、上手くいっている事例などを紹介。「しかし協同の取り組みは始まったばかりなので、今日のお話しも参考にさせて頂き、その可能性を拡大していきたい」とお答えをした。


  質疑の後に実際にウスタブロー地区に行ってみた。とにかく自転車の多いことに驚く。運輸部門におけるCO2削減は相当にすすんでいることを痛感する。
  暖房費の節約に約立つよう建築物を改造することもやっている。簡単なアドバイス後、改築の段取り・費用負担や節約の取組を情報提供もしている。とにかく取り組みが具体的なのが特徴とも言える。
  ただしコペンハーゲンの場合、中心部では建築規制が厳しいので、なかなか大胆な変更はできない。このことが課題と言えば、当面の課題でもありそうだ。
  また地域熱供給がいきわたっているため、各家庭から出されるCO2は少ないが、肝心の供給源は、その50%を海外炭に依存していることも今後の課題考えられる。お話しを伺う限りでは、消費者サイドの省エネの取り組みはかなり進んでいる。問題は供給サイドの脱化石燃料という課題だろう。この点については、翌日のコペンハーゲン市役所で、その取り組みについて調査することとしたい。


  企業もこの取組に興味を示している。実際にこのプロジェクトに積極的に関与したいとの意思を示してきているそうだ。本業は弁護士というハンセン代表は、「日本の企業も、このプロジェクトを聞きつけたら売り込み営業にくるかもしれませんね」と話していた。
  上手くモデルとして確立したら、ノウハウを提供していく考えはあるか?との問いに、それは可能だし、現に他国から問い合わせがあると即座に答えられた。
  良いアイデアを出した市民に懸賞金を出したり、民間企業に積極的なビジネスの場を提供するなど、行政ではなかなか取り組みづらいことも、どんどんおこなっていく姿勢が伝わってくる。
  我が国ではまだまだ芽吹いたばかりのNGO活動だが、今後政府の対90年比25%削減を実現するためには、積極的に取り組んでいかなければならない分野であると考えられる。



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