丘珠空港のジェット化見送りへ HOSHINOTAKASHI

質問

 丘珠空港のジェット化をめぐり多くの意見が存在していることは私も承知しています。反対・賛成それぞれ言い分はあるでしょう。しかし、私は、丘珠空港周辺に住み、日々その騒音に悩まされ、いつ起こるかわからない事故への不安を抱えながら生活している多くの住民の声があることを踏まえて御質問をいたしますので、御配慮ある知事の答弁を御期待申し上げます。(発言する者あり)

  質問の第一は、丘珠空港問題を扱うに当たっての手続上の課題、言いかえれば住民合意にかかわる点であります。
  近年、航空需要が飛躍的に増大をしているとはいえ、その利用実態は、まだまだ特定の人たちに限定されている現実があります。 一方で、空港周辺住民がこうむるさまざまな不利益は、機材の大型化に伴い、質・量ともに満遍なく拡大をする傾向にあります。 したがって、空港を新設するあるいは拡張する、こういう場合には地元住民の合意形成が何よりも大前提となります。 このことは、新東京国際空港が着工から供用開始まで実に十一年を要したことからも明らかであります。
  さて、丘珠空港のジェット化をめぐる動きですが、空港を抱える地方都市からの推進陳情があると同時に、各種団体の反対運動が存在していることも厳然たる事実であります。 札幌市及び道が実施をした実態調査も、それぞれジェット化を前提としないという条件で行われており、その調査結果の分析なり議論は、これからという現状にあります。(発言する者あり) さらに、横路前知事は、公式・非公式を問わず、同空港のジェット化に対しては慎重な発言を重ねてまいりました。
  こうした状況の中で、報道によりますと、六月十二日に開かれた道と札幌市の行政懇談会において、知事が、ジェット化に向けて札幌市とともに国に要望することで合意したとされております。さらに、六月二十日、朝刊各紙で明らかにされました、滑走路延長は千八百メートルということで知事が合意という問題であります。
  議会討論を含む各種・各級議論が結論を得ていない時点でこうした発言がなされたとすれば、それは、民主主義の基本である住民自治を否定しかねない問題に発展するおそれがあります。
  さらに、専門家などの意見を聞くところによれば、グルービングと呼ばれる滑りどめなどの対策を講じたとしても、丘珠地区特有の気象条件から、千八百メートルの滑走路では、小型ジェット機の離発着は物理的にも不可能という意見もあります。

 繰り返しますが、この種問題は、あくまでも住民の合意形成を基本として進めるべきと考えます。そこで、知事の報道発言の真意について、まず伺います。
 また、この際、道と札幌市は、丘珠空港問題についてどのようなかかわりを持つのか、あわせて見解を伺います。

  さて、質問の第二は、丘珠空港のジェット化問題についてであります。
  四年前に始まった丘珠空港のジェット化問題の端緒は、民間航空会社であるANKが、現在就航しているプロペラ機の後継機種としてジェット機を導入することを決めたという極めて経営戦略上の判断でありました。
  しかし、丘珠空港ではジェット機を就航させることができないことから、空港のジェット化が浮上したものであります。
  一方、丘珠空港には、かつて全日空及び東亜国内航空が就航していましたが、それぞれ千歳空港に撤退しております。
  昭和四十七年一月に全日空が千歳空港に移行した理由は、新潟空港及び仙台空港が拡張されたのに伴い、ジェット機の発着ができない丘珠空港に見切りをつけたことでした。
  また、昭和四十九年十一月には、東亜国内航空が千歳に撤退をしております。
  昭和四十八年十二月に開かれました北海道議会決算特別委員会におきまして、東亜国内航空からどういう相談があって、これに対してどう対応したのかという質問に、道は、東亜国内航空から、航空機のジェット化は丘珠では困難なので千歳に移転したいという相談があり、これに対し、やむを得ないものと考えたと答弁されています。
  そこで、今回のANK問題と、かつての全日空及び東亜国内航空問題を比較してみますと、今回に限り、道は、なぜ丘珠空港をジェット化するためにみずから動こうとするのかという疑問が出てまいります。
  この疑問に答えるためには、ANKから道に対してどのような要請があったのか、それに対して道はどのような対応をとったのか、また、ANK自身が運輸省及び防衛庁に対してどのような働きかけを行ってきているのか、それに対して両省からいかなる返答がなされているのかにつきまして明らかにされる必要がありますが、今回は、その問題点の指摘にとどめておきます。
  先ほど土木部長は、佐藤(寿)議員の質問に対して実態調査の内容について答弁をされました。問題は、この実態調査の結果と今回の丘珠空港のジェット化問題との関連こそが明らかにされなければなりませんが、この問題についても今後の課題として問題点を指摘しておきます。
  そこで伺います。

  北海道の航空ネットワークについて具体的な計画を立て、その中で丘珠空港はどのような位置づけをされるのかを明らかにした上で、ジェット化問題を含め議論されるべきと考えます。知事の所見をお尋ねいたします。

  さらには、丘珠空港の整備を含め、交通アクセスに関する課題は、その是非をめぐって個別のケースとして検討するには限界があります。したがって、鉄路、陸路、空路を網羅した北海道全域の総合的な交通ビジョンについて早急に検討した上で、今後、整合性のある議論が必要と私は考えます。
  そこで伺います。

  次期の長期総合計画の策定においても、このような観点から作業を進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。

 次に、質問の第三ですが、丘珠空港の整備についてであります。
  空港整備法は、国内の空港を役割に応じて三種に分類し設置管理者を定めることを第一の役割とし、それぞれの空港整備費用をだれがどれだけ負担するかを決めていることを第二の役割としています。しかし、丘珠空港は、防衛庁が設置管理することから空港整備法には指定されておりません。空港整備法が指定していない、その他空港の整備事業を国に求めるには、それ相応の理由が必要となってまいります。
  丘珠空港と同様のその他空港で、過去において空港整備計画に盛り込まれ、空港のジェット化事業が行われた例があります。一つは米子空港であり、もう一つは徳島飛行場であります。両者ともに、その他空港のまま運輸省が整備事業を展開しております。
  しかし、両空港には、運輸省が乗り出す理由がありました。それは航空需要の増大という公共的理由であります。お客さんが多過ぎてプロペラ機では対応できないということから、運輸省が防衛庁に積極的に働きかけ、両省の間で協定書が交わされた上、空港整備計画に盛り込んで整備事業を実施したのであります。
  しかし、丘珠空港の場合、ジェット化が求められているのは、航空需要の増大という公共的理由ではなく、航空会社がジェット機の導入を決めたからという私的理由であります。
  したがって、運輸省に丘珠空港を拡張する主体的理由がない以上、道が、空港の設置管理者である防衛庁との協議を事実上引き受けることになりますが、さまざまな課題が出てくることは明らかであります。
  そこで伺います。

  このような課題を抱えていることからも、丘珠空港の整備については慎重に取り運ぶべきものと考えます。知事の所見をお聞かせください。

  質問の最後は、新千歳空港と丘珠空港の関係についてでございます。
  仮に丘珠空港がジェット化された場合を想定しますと、将来的に、丘珠空港が東京を初めとする道外各空港とのアクセス拠点になるのではないかという懸念が生じます。前述しましたように、かつて丘珠空港には全日空及び東亜国内航空が就航していました。それらは、機材をジェット化したことを契機に千歳に撤退したわけですが、丘珠空港がジェット化されれば再び戻ってくることが予想されます。現にJASはそのように主張しております。
  また、専門家によれば、ジェット機は五百キロ以下の航路だと採算がとれないと言われています。そうすると、やがては東北へ、あるいはその他本州各都市へと足を伸ばしたくなるのが自然の流れでしょう。

  そうなると、JRでわずか三十六分の距離に、同じような機能を持つジェット空港が二つ存在するという奇妙な現象が出現することになります。
  その場合、多額な投資と労力を費やして整備中の新千歳空港と丘珠空港との機能分担が崩れる事態が到来する可能性を指摘する声もありますが、知事はこのことについてどうお考えなのか、見解を伺います。


  私の質問は以上で終わりますが、最後に一言申し添えます。
  丘珠空港周辺住民を中心に根強いジェット化反対の声がある中で、唐突とも言える形でジェット化に向けた検討開始の姿勢を知事が打ち出したことに、住民の間から強い不満と疑問が表明されています。
  こうした住民の不満と疑問は、行政に対する不信感へと発展する可能性を内包していること、そしてそのことは、空港の整備拡張という極めてナイーブな問題の解決を長期化させ、ひいては複雑化させる可能性を内包していることを強く指摘しておきます。
  堀知事に寄せる道民の期待は大きなものがあります。こうした期待に知事は必ずやこたえていただけることを確信いたしまして、私の質問を終えます。



答弁(堀達也知事)
 丘珠飛行場問題に関して、まず、行政懇談会などについてでありますが、この懇談会におきましては、道、札幌市双方に関連のある中長期的な課題などについて話し合い、その中で、丘珠空港については、地元住民の理解を得ながらジェット化に向けた検討を進めることが必要であるという認識で一致したところであります。
 また、滑走路の延長について報道がありましたが、私は、小型ジェット機が就航する空港は二千メートル級が基本であると考えております。
 次に、道や札幌市のかかわりについてでありますが、丘珠空港のジェット化の検討を進めるに当たっては、地元住民の理解を得ることが重要であると認識しております。
 今後、札幌市が騒音調査の結果などを踏まえて地域への説明を行うことになりますので、道といたしましては、札幌市と十分協議して進めてまいりたいと考えております。
 次に、北海道の航空ネットワークと丘珠空港の位置づけについてでありますが、道においては、国際的な交通拠点づくりを目指して、新千歳空港や函館空港の国際化を進めるとともに、本州と結ぶ高速幹線交通網として釧路・旭川空港などの整備を図り、道外航空路線網の拡充に努めております。
 また、地域を結ぶ高速交通ネットワークの形成を目指して、地方空港の整備やコミューター航空構想を進め、道内路線の拡充に努めてきており、丘珠空港は、この中で道内航空網の拠点空港として活用されております。
 このようなことから、現在、約三十八万人の利用者があり、道内及び札幌市の経済交流を支える基盤施設としての役割を果たしていること、丘珠空港の利用実態から、道内他空港と調和した空港整備を考える必要があること、さらに、現在運航しているエアラインがYS11型機の後継機として小型ジェット機の導入を開始していることなどから、地元住民の理解を得ながら、ジェット化に向けた検討を進めることが必要な時期に来ているものと考えております。(「そのとおり」と呼び、その他発言する者あり)
 次に、新しい総合計画における総合交通体系についてでありますが、近年、国際化の進展や交通ニーズの多様化など交通を取り巻く環境が変化してきておりますことから、これらを踏まえ、北海道の地理的な条件を生かした国際的な交通拠点の形成、道内や全国の交通圏を広げる高速交通体系の形成などを柱に、航空機や鉄道など、各交通機関の特性を生かした総合的な交通体系を形成することが重要であると考えております。
 今後、道民や市町村の声を聞きながら、このような観点に立って総合的な交通体系の整備の方向を検討し、新しい総合計画の策定に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、丘珠空港の整備についてでありますが、御指摘のとおり、丘珠空港は、空港整備法に位置づけられていない、防衛庁が設置管理するその他の飛行場で、運輸大臣が公共の用に供すべき施設として指定している空港であります。
 この空港を整備する場合には、地元として運輸省に要望を行い、これを受けた運輸省が必要性を検討し、防衛庁と協議して、空港整備五箇年計画に盛り込むことになります。その後、実施採択に向けて要望を行うことになりますが、それには札幌市が地元住民の理解を得ることが最も大切であると考えております。
 丘珠空港の採択までには、空港整備の基本計画案の策定や、事業主体、事業費負担のあり方などさまざまな課題があり、今後とも、札幌市はもとより、国などとも十分協議してまいりたいと考えております。
 最後に、新千歳空港と丘珠空港との関係についてでありますが、新千歳空港は、日本の北のゲートウエーや国際物流拠点、国内航空ネットワークの拠点空港としての役割を担っております。
 また、丘珠空港は、道内航空網の拠点空港として活用されるとともに、救急輸送、災害時活動、報道取材など、小型機やヘリの基地として利用されております。
 さらに、丘珠空港は、震災時などの道央圏における防災拠点としても期待されております。
 このように、両空港は、それぞれの特性や役割を生かして今後とも活用されていくものと考えております。
 以上でございます。
(平成7年第2回定例会7月4日)

この質問の後、堀知事は「道民合意を得るにいたらなかった」と、丘珠空港のジェット化を正式に断念した。
HOSHINOTAKASHI