全道の河畔林を保全 HOSHINOTAKASHI

質問
 土木部の河川事業につきまして、以下、順次質問をしてまいります。
 平成元年度から増毛町の暑寒別川あるいは清水町のペケレベツ川で始まったふるさとの川づくり事業、こうしたものは住民参加によって計画を策定するなど、河川周辺の景観を尊重し、親しみやすい水辺空間を創出するなど、過去の治水一辺倒事業に比べて環境問題を重視したものとして高く評価できるものと考えています。
 現在も札幌の精進川など全道の八河川で事業が進められているわけですけれども、今後とも全道的な事業展開が望まれるところであります。
 しかし、残念なことに、そうしたさなかに札幌の精進川の河畔林が売却をされてしまったこと、そしてそのことが適切でなかったこと、さらには売却先に対する買い戻しの交渉が現在行われていることなどにつきましては、さきの一般質問の中で明らかになりました。
 私もまた、この買い戻し交渉が功を奏することを心から願っている者の一人であります。ぜひ頑張っていただきたいと存じます。
 さて、買い戻し交渉の行方は見守りつつも、今一番大切なのは、二度とこうした過ちを起こさないためには一体どうしたらいいのだろうか、このことをみんなで考えていくことだと思います。きょうはそのことにつきまして順次討論をしていきたいと思います。
 まず、そのためには第一番目に、保全すべき区域、このことは最近一般的には河畔林というように呼ばれておりますけれども、その河畔林とはそもそもどのような区域のことをいうのかについて明確にする必要があるだろうと思います。
 さらにその次には、その保全すべき河畔林が全道的に見てどこにどれだけ存在をしているのか、このことを特定しなければなりません。そうした上で、保全すべき対象が明らかになったならば、それをどのような方法で保全するのか、その具体的な方法を確立すべきであります。
 そうした観点から、幾つか質問をしてまいります。
 まず第一には、今回問題となった精進川と同様のケースで、元河川敷地が第二種の普通財産となっている地域、その現況についてお伺いをいたします。
 また、先ほど申し上げましたように、河畔林の位置づけを明確にするとともに、その区域を特定する必要があると思いますけれども、見解をお伺いいたします。



 
答弁(小山内一夫河川課長)
 精進川と同様の地域の現況についてでありますが、平成七年度末現在において、第二種普通財産として管理しているもののうち、河川敷地であったものは八十六河川、約百四十三万平方メートルあります。
 このうち、雑木林については、すべての現況を把握しておりませんが、例えば、札幌市の精進川、月寒川、野津幌川、旧琴似川や小樽市の勝納川や朝里川などにおいて、樹木が繁茂し、雑木林を形成している地域があります。
 これらの雑木林につきましては、河川と一体となって良好な自然環境を有する雑木林を河川林ととらえ、その現況を把握してまいりたいと考えております。



質問
 河畔林ですね。



答弁(小山内一夫河川課長)
 はい。



質問
 これまで何となく新聞等でも使われておりました河畔林、その位置づけが、ただいまの答弁で、河川と一体となって良好な自然環境を有する雑木林であるというふうなことが明らかになりました。
 また、札幌市及び小樽市におきましては具体的な河川名も明らかになりましたが、なお、全道的な状況については把握し切れていないということでございます。保全をすべき対象が明らかになっていなければ、保全のしようがありません。
 そこで、第二の質問でありますが、第二種普通財産のうち、今明らかになりました河畔林として位置づけられる雑木林を洗い出し、その保全策として例えば保安林の指定などを検討すべきと考えますが、具体的な方策をお示しいただきたいと存じます。
 また、その方策が現段階で決まっていないとすれば、方策が決定するまで処分を保留するべきと考えますが、見解をお伺いいたします。



答弁(菊地昭憲土木部長)
 河畔林としてとらえられるものの保全策についてでありますが、河畔林につきましては、さまざまな状況がありますことから、それらの地域に適した保全の方法を検討してまいりたいと考えております。
 例えば、周辺の山林に接続している場合は保安林の指定が可能な場合もあると思いますし、都市部であれば、地元市町村の都市計画に組み入れていただき、緑地保全地域や公園の指定が可能な場合もあろうかと思います。また、それ以外の場合もあろうかと思います。
 いずれにいたしましても、こうしたそれぞれの河畔林の状況を踏まえ、それに適した保全の方法を考えてまいります。
 なお、具体的な保全の方法を検討するまでの間は、処分の保留を含め、管理・処分について慎重に対処してまいります。
 以上でございます。



質問
 ただいまの御答弁で、全道的には保全すべき対象が今のところすべて特定されているわけではないけれども、保全すべき対象をおよそ四つに分類した上で、例えばということですけれども、保安林の指定を行ったり、これが例えばAのパターンとすれば、Bのパターンは、市町村の都市計画に組み入れてもらう方法をとるのだと。さらに、これがBとすれば、Cのパターンとしては、そのほかの現行の制度などを活用しながら保全していく。それで、A、B、Cというふうに来まして、しかし、保全すべき河畔林のうち、現行の制度だけではまだ網がかぶせられない部分については、その具体的な保全の方法が明らかになるまで処分の保留をしていきたいと。こういうことが明らかになったわけであります。
 このことによって、さきの一般質問に対する知事答弁の中で、精進川についても、売ってしまった残りを保全していきたいという決意が今表明されたわけですが、その具体的な方策が今この時点で明らかになったのだというふうに考えます。ぜひそのようによろしくお願いをしたいと思います。
 さて、次の質問でありますが、これまたさきの一般質問の中で明らかになったものでありますが、第二種普通財産の管理・処分に関する取扱要領を見直すこととなりました。
 この要領に基づいて設置されている管理処分委員会の見直しも含めて、今後の管理・処分についてお伺いをしたいと存じます。



答弁(大島隆管理課長)
 今後の管理・処分についてでありますが、第二種普通財産管理及び処分事務取扱要領を見直すことにより、管理処分委員会の構成員に事業部門を加えること、現況把握を徹底すること、市町村との十分な協議を行うこと、処分に当たっての合議のあり方などについて検討し、必要な改善を行ってまいります。



質問
 第二種普通財産というのは、これは国の河川敷地が道に移され、売るべき財産としてのものでありますが、その売るべき土地を処分する委員会の中に川づくり事業などを進める事業サイドの人たちも入るのだ、そうすることによって今後はあのようなことがないようにしたいという御答弁だというふうに受けとめさせていただきます。
 さて、これまでの議論は、既に河川敷地が治水事業あるいは川づくり事業などによって用途廃止をされて、第二種普通財産になったものの扱いについてお伺いをしてきたわけでありますが、そもそも私が考えるところによれば、もし河川敷地のまま残しておくことができるならば、今回のような問題は初めから起こらなかったのではないかというふうに思うわけでありますが、河川改修工事の完了に伴って不要となった河川敷地の用途廃止の要件、さらには、河川とその周辺の環境保全から考えた今後の用途廃止のあり方について見解をお伺いいたします。



答弁(小山内河川課長)
 河川敷地の用途廃止についてでありますが、河川敷地の用途廃止につきましては、河川工事が一定計画により完成し、治水上及び利水上支障を生じないものについて行うことが基本要件であります。
 また、河川と一体となった河畔林を有する敷地の用途廃止に当たっては、自然環境の保全に配慮するため、具体のケースについて十分な検討を行ってまいりたいと考えております。
 以上です。



質問
 国の法律である河川法との関係もあって、そこまでの答弁しかできないのかもしれませんけれども、ぜひ環境保全という立場で扱いを慎重に行っていただきたいと思います。
 さて、昔から、川を制する者が政治を制するというように言われてきた日本の歴史でありますが、北海道においても、道が管理をする中小の河川、その延長は一万二千キロメートルに及ぶと私は聞いております。その中で、治水という観点から改修を要する河川の延長は七千六百キロ、しかし、平成六年度末の段階で、そのうちで実際に整備をされているキロ数は実は千九百九十六キロ、必要な事業の四分の一にすぎないというふうに承知をしております。
 こうしたことから、少し雨が多く降ったりすると洪水になったり、そんな被害が近年においても各地で発生をしております。そうしたことから、土木部河川行政の中でさらなる治水事業の精力的な推進が必要だというふうに私も考えます。しかし、これまで質問をしてまいりましたように、同時に、その背後にある環境問題との関係、これが非常に大事なわけであります。
 そこでお伺いいたしますが、治水事業の実施に当たりましては、環境保全を念頭に置いて進めるべきと考えますが、どのような方針に基づいて今後進めようとしているのか、お伺いをいたします。



答弁(小山内河川課長)
 環境に配慮した河川整備についてでありますが、平成四年度に北海道の川づくり計画検討委員会から提言を受けまして、平成六年度に北海道の川づくり基本計画を策定しております。これにより、自然環境や生態系の保全に配慮した取り組みを進めてきているところであります。しかしながら、生態系の保全など、まだ未経験の分野も多く、模索を繰り返しながら取り組んでいる状況であります。
 このため、今後も、川づくりに関する調査や研究を重ねるとともに、動植物の専門家にアドバイザーとして川づくりの計画に対する意見を聞くなど、多自然型川づくりに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上です。



質問
 これまでは河川の問題に限定をして伺ってまいりましたが、北海道は今、環境基本条例の策定を急いでいる最中であります。土木部といたしまして、環境に対しどのような認識のもとに公共事業を進めていこうとしているのか、部長にお伺いをいたします。



答弁(菊地土木部長)
 環境に対する認識についてでありますが、環境は私どもの生存基盤として欠くことのできないものであり、快適な生活環境づくりや良好な自然環境の保全は重要な課題であると認識しております。
 土木部に関連する公共事業につきましては、実施の過程で自然環境に働きかける行為でありますことから、事業を進めるに当たっては、環境の保全に十分配慮していく必要があると考えております。



質問
 土木部という名称が適当なのかどうなのか、これから議論もあるかと思います。一般的には、土木部、土木行政というと、何か地球を削り取っていく、環境保全をしている団体なり道民や市民からは環境保全の敵のようなイメージさえ持たれる場合があります。しかし、その内実は、今ずっとお話をされたように、そうではないのだと。
 具体的には、もう昭和六十三年からいろいろな事業をされている。多自然型川づくり、ふるさとの川モデル事業、桜づつみモデル事業、あるいは、現在の精進川で問題になりましたけれども、道の単独事業としましても、ふるさとの川づくり事業や、あるいは失った河畔林を復元する、こんな意味から河畔林の整備事業なども随分行われている。これは足しますと全部で八十一河川に及んでそうした川づくり事業が進められている。このことを胸を張って道民の前に明らかにしながら、ぜひ今後とも環境に優しい土木行政を推進していただくことを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
(平成8年第2回予算特別委員会第2分科会7月2日)

翌年、道では全道の河畔林実態を調査するために、予算を計上した。

HOSHINOTAKASHI