千歳川放水路計画を断念へ HOSHINOTAKASHI

質問
 千歳川放水路計画は、この十五年間に二百億円もの調査費が注ぎ込まれています。それにもかかわらず、着工のめどが立たないまま推進派と反対派の膠着状態が続いており、その結果、必要な治水対策が施されることなく今日に至っていることは、あした発生するかもしれない洪水に不安を持ちながら生活している流域住民に対して行政がその責任を放棄していると指摘されても仕方のない側面を有していると言えます。
 計画が治水技術的にはいかにすぐれたものであったとしても、それが漁業者や自然保護団体などを含めた住民の合意可能なものでない限り、日の目を見ないということを教訓として残した十五年間でありました。
 ことし六月に成立をした改正河川法におきましても、環境保全と住民合意が新たに明記をされております。
 知事は、これまで千歳川放水路問題の是非について明言を避けてこられました。その理由は、第一に、計画が国の事業であること、第二に、事業に対する賛否が存在しているなどの点を配慮しての結果と考えます。しかし、状況はこの間大きく変化をしてきました。
 国においても、財政再建という視点ではありますが、ダム事業など公共事業の見直しが進められてきており、亀井前建設大臣も、北海道の「時のアセスメント」制度を評価する発言をしているのであります。また、環境重視型社会の到来など、社会環境も変化をしてきました。新しく就任をした鈴木開発庁長官も、治水対策については放水路計画にこだわらない旨の発言を公式の場で行っております。
 今回、道は千歳川流域治水対策検討委員会を設置しました。過日の我が会派の代表質問に対して知事は、その提言のまとめをおおむね一年と答えられました。しかし、検討対象に放水路計画が選択肢の一つとして入っているとしたら問題であります。十五年かかって議論しても結論を出せなかったという経過の重さを認識していないと指摘せざるを得ません。
 だれが、どんなに考えても、放水路計画が合意不可能な治水計画であることが明らかとなった以上、そして、それにもかかわらず千歳川流域の治水対策が焦眉の課題である以上、早急に合意可能な計画を策定することこそが行政の責任であります。
 私は最近、恵庭市や千歳市の住民の方と話をする機会がありました。彼らの多くは、洪水から生活を守るのは放水路しかないと説明されてきたから、そう思ってきたけれども、ほかの方法があるのなら、それでもいい、早く水の不安から逃れたいと語っています。
 北条前開発局長の、そして鈴木開発庁長官の発言に示されるように、放水路以外の対策はないとしてきた開発庁の姿勢は事実上転換をされました。今こそ放水路に頼らない対策の可能性を徹底的に追求するべきであり、早期の着手こそが求められているのであります。
 世論の大勢は、石狩川、千歳川流域での治水対策を求める方向に集約されつつあると思います。道は、検討委員会での議論を白紙の状態でスタートさせるとしています。これでは十五年間の議論を蒸し返すこととなりかねません。知事の私的諮問機関である検討委員会に対しては、条例に基づく審議会などとは異なり、諮問に当たってあらかじめ知事の意思を明確にすることが可能であります。
 我が会派の代表質問に知事は、「これからの治水対策のあり方について原点に返って協議検討され、」と答弁をされました。「これからの治水対策」とは、言うまでもなく、合意が得られず膠着状態が続くこれまでの放水路計画にかわる新しい治水対策を指しているのであり、「原点に返って」とは、古来より、治水は、同一水系、同一流域内で実施するという治水の原点を指していると受けとめられます。ここまで、事実上、知事は放水路計画の見直しの立場を明らかにされているわけであります。あとはわかりやすい表現をするかどうかだけであります。
 流域住民を現実的かつ早期に洪水から守るため、知事は、放水路計画の見直しを明言し、そのことを前提として、放水路以外の新たな治水対策のあり方について検討委員会から提言を受けるべきと考えますが、見解を伺います。



答弁(堀達也知事)
 千歳川流域治水対策検討委員会についてでありますが、この検討委員会は、千歳川流域の治水対策について合意形成に向けての話し合いの場の方式として設置したものであります。
 私としては、この委員会において広く関係者との意見交換を行いながら、これからの治水対策のあり方について、これまでの経過やさまざまな議論を踏まえ、原点に返って協議検討され、地域の合意としての千歳川流域の治水対策について取りまとめ、提言をいただきたいと考えております。
(平成9年第3回定例会10月7日)

この後、知事は千歳川放水路計画を正式に断念した。
HOSHINOTAKASHI