2018年3月7日 第一回定例会一般質問 HOSHINOTAKASHI

 目次

                      本質問


一 電力システム改革について

 (一) 送配電部門の分離についての認識
 (二) 
送配電会社の公平性担保
 (三) 送配電分離と再生可能エネルギー事業者の新規参入
 (四) 再エネ導入促進と北本連系線の増強

二 洋上風力発電について

 (一)  洋上風力発電に対する認識
 (二) 洋上風力発電による供給量
 (三) 洋上風力発電の促進区域指定

三 水素社会について
 (一) 第2期に向けた取組などについて
 (二) エネファームなどの導入目標
 (三) 水素発電について
 (四) 道有施設への水素発電導入
 (五) 水素製造を目的とした再エネの活用
 (六) 水素市場が形成される日

四 科学技術の振興について

 (一) 環境・エネルギー分野における研究開発
 (二) 再生可能エネルギーの活用

                      再質問

一 新エネの位置づけ
二 水素事業と新エネ導入促進基金
三 本道を再生可能エネルギー基地に
四 北本増強は国策で



本質問


 通告に従い、伺ってまいります。


  一 電力システム改革について


 まず、電力システム改革についてであります。
 2016年4月に電力の小売が全面自由化されてから、2年がたとうとしております。さらに、2年後の2020年4月には、北海道電力を初めとする10電力会社から送配電部門が法的に分離されます。電力システム改革の総仕上げに入るわけであります。これにより、北海道電力は、電力市場に新規参入をした複数の新電力会社と同列に並ぶことになります。

  (一)送配電部門の分離についての認識
 そこで伺います。
 国は、発電会社を競い合わせることで、国際競争力に耐え得る電力コストの実現を目指していると承知しておりますが、知事は、2年後の送配電部門の法的分離をどのように受けとめておられるのでしょうか。

   答弁(知事)
  電力システム改革についてでありますが、国は、電力の安定供給を確保し、電気料金を最大限抑制するとともに、需要家の選択肢や企業の事業機会を拡大するため、電力システム改革を実施しており、これまで、電力広域的運営推進機関の設立により、全国規模の需給調整機能が強化されたほか、電力小売の全面自由化が実施されたところであり、平成32年度には、大手電力会社の送配電部門の法的分離が予定されているところであります。
 この法的分離により、
送配電部門の中立性が一層高まり、発電事業者や小売事業者の送配電網の公平な利用が確保されることから、電力市場における活発な競争を実現する上で重要であると認識いたします。


 (二)送配電会社の公平性担保について
 北海道電力から法的に分離される送配電会社は、全国横断的に組織されている国の機関の電力広域的運営推進機関との連携により、電力の需給調整を担うこととなりますが、電力会社同士の競争が適正に行われるためには、送配電会社の公平性が担保されなくてはなりません。
 その際、国の役割、道の役割が重要となります。知事はいかに対応しようとしているのでしょうか、伺います。

  答弁(阿部経済部長)
送配電事業者の中立性の確保についてでありますが、送配電事業者は、法的分離により、発電事業や小売事業の兼業が原則禁止され、一層の中立性を確保するための、人事、予算等に係る規制を受けるとともに、最終保障サービスなど、電力の供給責任を着実に果たせるよう、法的分離後も、引き続き地域独占とし、総括原価方式による料金規制が措置されることとなっており、現在、国において具体的な検討が進められております。
 道といたしましては、積雪寒冷で広域分散型といった地域特性を有する
本道においても電力システム改革の効果を享受できるよう、国に対し、需要家の保護を徹底するとともに、競争環境の整備に向けて必要な措置を講じるよう要請しているところでございます。

  (三)送配電分離と再生可能エネルギー事業者の新規参入
 送配電分離により、再生可能エネルギーを電源とする新規参入が促進されると考えられます。
 その意味で、再生可能エネルギーを主要な電源の一つにしていくという知事にとって、発送電分離は大きなチャンスになると考えますが、いかがでしょうか。

 答弁(知事)
  新エネルギーの導入拡大についてでありますが、電力システム改革が進む中、道内では、電力小売の全面自由化を契機に、風力やバイオマスといった地域資源を活用した電力を需要家に供給する動きが見られており、今後予定されている送配電部門の法的分離により、送配電網の公平な利用が確保されることから、事業者の参入機会の拡大が期待されるところであります。
 道といたしましては、
電力システム改革を新エネルギー導入拡大の一つの好機と捉え、新エネルギー導入加速化基金も活用しながら、地産地消の取り組みを支援するなど、地域や企業の皆様と連携のもと、積極的に取り組んでまいります。

 (四)再エネ導入促進と北本連系線の増強
 電源開発株式会社が敷設した、本道と本州を結ぶ北本連系線は、現在、60万キロワットの容量を持っております。北海道電力は、2019年 ― 来年3月に、これを90万キロワットに増強するものと承知しています。それでも、道外の電力系統ごとの連系線と比較した場合、不十分です。
 電力システム改革が進められる中、再生可能エネルギーの導入を促進するためには、北本連系をさらに増強すべきと考えます。知事の認識と対応について伺います。

答弁(阿部経済部長)
地域間連系線の増強についてでありますが、系統規模が小さい本道において新エネルギーの導入拡大を進めるためには、他地域に比べて脆弱な地域間連系線を増強し、本州の調整力を活用していくことが重要と認識いたしております。
 地域間連系線の増強につきましては、電力広域的運営推進機関において、整備方針に基づき、整備計画を策定することとしており、道といたしましては、本道の新エネルギーのポテンシャルを我が国全体で生かし、エネルギーの多様化に貢献できるよう、
北本連系線のさらなる増強について、引き続き、国や推進機関に対して要請を行ってまいる考えでございます。



  二 洋上風力発電


 次は、洋上風力発電についてです。
 我が国では、これまで、陸上に設置するタイプが大半でしたが、欧州では、一般海域に設置する洋上風力発電が主流です。景観、立地場所、用地代、健康被害、風量など、さまざまな点で、洋上のほうが陸上より優位に立っているからであります。
 欧州におくれること十数年、政府は、我が国においても洋上風力発電の導入の緒につきました。開会中の国会に、長期にわたり海域を占用するためのルールを定めた法案を提出すると承知しております。

  (一)洋上風力発電に対する認識
 そこで伺います。
 洋上風力発電につきまして、私は2015年の本会議で知事の見解を伺っています。あれから、国の動きは、大きく洋上風力発電の推進にシフトしていると考えます。
 こうした状況の変化を知事はどのように受けとめているのでしょうか。現時点における知事の洋上風力発電に対する認識とあわせて伺います。

答弁(知事)
洋上風力発電についてでありますが、国は、洋上風力発電の円滑な導入のため、平成28年に、港湾区域の利用について、発電事業者を公募により決定する制度を整備するとともに、現在、一般海域の利用に関する新たなルールの検討を進めているところであり、事業者が洋上風力発電を実施しやすい環境が整いつつあると認識いたします。
 
洋上風力発電は、陸上に比べて高い発電効率が期待できるほか、騒音などの住民生活への影響が少ないなど、新エネルギーの導入を拡大する上で重要なエネルギー源の一つであると考えるところであります。

(二)洋上風力発電による供給量
 今後、一般海域における洋上風力発電が国策として推進された場合、四方を海に囲まれた地域特性からして、本道における風力発電のポテンシャルは、洋上風力発電の導入により、これまでの陸上風力発電のみのポテンシャルを大幅に上回るものと考えますが、いかがでしょうか。
 また、洋上風力発電のポテンシャルを、標準的に電力を消費する世帯数で示すとどの程度になるのでしょうか、伺います。

答弁(阿部経済部長)
洋上風力発電に関し、初めに、風力発電のポテンシャルについてでありますが、環境省は、再生可能エネルギーの導入の可能性などについて、自然条件や法規制などの制約要因を考慮に入れた上で、開発が可能なエネルギーの量をあらわした導入ポテンシャルを公表しており、平成28年8月の最新データによりますと、本道の風力発電の導入ポテンシャルは、陸上風力発電で約1億5000万キロワット、洋上風力発電で約4億キロワットと推計されていると承知をいたしております。
 なお、この洋上風力発電の設備容量から、設備利用率を30%と仮定して年間の発電電力量を試算すると、
標準家庭の約3億8000万世帯分の年間使用量に相当するものでございます。

(三)洋上風力発電の促進区域指定
 国によれば、2016年度に約330万キロワットであった風力発電設備について、2030年度には3倍の約1000万キロワットを目標とし、全国5区域で事業展開するとされています。促進区域の指定後、事業者を公募し、選定することになると考えます。
 そこで伺います。
 この際、民間事業者と連携し、洋上風力発電区域指定の道内への誘致を進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。

答弁(阿部経済部長)
洋上風力発電の促進についてでありますが、四方を海に囲まれた本道は、洋上風力発電について高いポテンシャルを有しているものと認識いたしております。
 国は、一般海域における洋上風力発電の導入を促進するため、長期にわたり発電事業者が海域を占用し、事業を実施することができる促進区域の指定など、海域利用のルールを定める法案の提出準備を進めており、法案成立後、促進区域の指定に向け、具体の制度設計を進めていくものと承知いたしております。
 一般海域における洋上風力発電の導入を円滑に進めるためには、促進区域の指定を受けることが重要であり、道といたしましては、
促進区域の指定に向け、道内におけるニーズや課題などを把握するとともに、国の動向を注視しながら、市町村、発電事業者と連携して対応してまいる考えであります。


 三 水素社会

   次は、水素社会についてです。
 私は、2015年の第3回定例会で、水素社会の到来に関しても知事の見解を求めました。その後、翌年の2016年1月に、道は、北海道水素社会実現戦略ビジョンを、同年7月には、水素サプライチェーン構築ロードマップを策定しています。そして、国は、昨2017年12月に水素基本戦略を公表しています。水素を取り巻く状況は、ダイナミックに変化しております。
 本道の品目別輸入額を比較すると、石炭、石油、天然ガスなどの鉱物性燃料が全体の6割を占めています。全国平均の2倍という高さです。低炭素社会を実現するためには、水素社会の構築を急ぎ、国の取り組みを大きく上回る取り組みが求められています。
 そこで、以下伺います。

(一) 水素社会に対する認識

 国は、昨年12月に明らかにした水素基本戦略の中で、水素を、新たなエネルギーの選択肢として位置づけました。水素社会の到来は、低炭素社会を実現するにとどまらず、持続可能なエネルギー社会を実現するためにも急がれているわけです。
 そもそも、知事は、現時点において、水素社会に対してどのような基本認識を持っているのでしょうか。国に倣い、水素を新たなエネルギーとして位置づけることも含め、見解を求めます。
答弁(知事)
 次に、水素社会に対する認識についてでありますが、水素は、利用段階でCO2 を排出せず、多様なエネルギー源から製造できることや、貯蔵性、可搬性にもすぐれるなどの特性を有しており、また、再生可能エネルギーから水素を製造することで、製造から利用までトータルにカーボンフリーを実現する新たなエネルギーの選択肢となり得ると認識いたします。
 道といたしましては、
本道の豊富な再生可能エネルギーから水素を製造し、道内各地でさまざまな利用を進めるサプライチェーンを構築することにより、エネルギーの地産地消、安全、安心な地域づくり、さらには新たな環境産業の創出をもたらす、北海道らしい水素社会につながるものと期待いたします。

(二) エネファームなどの導入目標

 道のロードマップでは、当面、エネファームと呼ばれています家庭用燃料電池と、FCVと呼ばれています燃料電池自動車の導入目標を定めています。
 しかし、その目標は、国の目標を下敷きにしたものと明記されております。これでは、家庭用暖房や自動車排気ガス由来の温室効果ガス排出量が全国平均を大きく上回るという課題は解決できません。
 また、家庭用燃料電池は、熱需要の多い地域で、より発電効果を発揮するという、本道に適したシステムであります。
 これらを踏まえるならば、目標時期の前倒しと目標値の上方修正が必須となります。いかがでしょうか。

答弁(小玉環境生活部長)
 水素社会に関し、まず、エネファームなどの導入目標についてでありますが、道では、国の目標や道内での現状を踏まえ、2030年を目途に、FCVは約9000台、エネファームは、全世帯の1割に当たる約22万基の普及を目指すこととしております。
 FCVにつきましては、これまで、4大都市圏を中心にインフラ整備が進み、国内では約2400台が普及している一方、道内では、室蘭市のステーションに続き、札幌に初めての民間ステーションが今月末に整備され、FCV普及の後押しとなることが期待され、また、エネファームにつきましては、2015年に、マイナス15度以下に対応する機器が発売されたところでありますが、車両等の本体価格や工事費が割高という課題があるものと考えております。
 道といたしましては、こうした利用機器とインフラの両面の普及状況や、寒冷地特有の課題を踏まえまして、市町村、関係事業者、団体など幅広い方々との連携のもと、
ロードマップに示す目標に向けた取り組みを着実に進めてまいります。

(三) 水素発電について
 本格的な水素社会を到来させるとするならば、エネファームやFCVで消費される水素とは桁の違う水素需要が発生します。それこそが水素発電です。
 国は、ことしに入って、神戸市で水素発電の実証試験を開始しました。世界初であります。そして、2030年には本格的な水素発電が商用化されるとしています。
 予想を大きく上回る、まさに幾何級数的な開発のスピードを見せつけられる思いです。いかがでしょうか。
答弁(小玉環境生活部長)
 水素発電についてでありますが、水素を直接燃焼する発電方法は、大規模な水素需要が見込め、発電時にCO2 を排出しないことから、国は、2030年ごろを目途に、本格的な商用化を目指すこととしております。
 また、
小規模な水素発電につきましては、神戸市内で、水素と天然ガスを混焼する自家用の実証事業が行われており、その成果を踏まえ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の関連施設への電力供給も検討が進められております。
 こうした取り組みにより、国が水素・燃料電池戦略ロードマップで描く水素発電の本格的な導入が着実に具体化され、今後の需要拡大にも弾みがつくものと考えており、道といたしましては、国の動向や、事業者による技術開発の進展などの情報収集に努め、道内での今後の取り組みに生かしてまいります。

(四) 道有施設への水素発電導入
 水素発電は、廃棄物が水だけという、極めて安全なシステムです。消費地で発電できることから、電気とともに熱も供給できる理想的なコージェネレーションシステムでもあります。LNGとの混焼も可能なため、当面は、小規模分散型発電としても注目されるでしょう。
 近い将来、道有施設などでも率先して導入すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

答弁(小玉環境生活部長)
 道有施設への水素発電の導入についてでありますが、積雪寒冷という地域特性を有する本道におきまして、水素を燃料とし、電気、熱を供給するコジェネシステムは、環境性や経済性にすぐれ、広域分散型の地理的特性に適した自立型システムとしても効果的と考えております。
 小規模な水素発電につきましては、現在、国において、さまざまな実証試験や技術開発などが進められ、水素と天然ガスを混焼するシステムは既に実用段階にあり、今後は、導入施設の形態や規模に応じた検討が必要と考えているところであります。
 道といたしましては、こうした技術開発の動向などを踏まえ、導入の利点とコスト、あるいは、寒冷地におけるメンテナンス、機器のハンドリングなど、
必要な情報を収集、評価の上、今後の道有施設等での活用の可能性について、検討を行ってまいりたいと考えております。

(五) 水素製造を目的とした再エネの活用
 道の水素社会実現戦略ビジョン及び水素サプライチェーン構築ロードマップでは、どちらも、水素製造を再生可能エネルギーの余剰電力で行うことが前提とされています。
 水素製造を目的とした再生可能エネルギー発電という発想が求められます。いかがでしょうか。
答弁(小玉環境生活部長)
 水素製造を目的とした再生可能エネルギーの活用についてでありますが、水素は、自然条件や地理的状況に左右される再生可能エネルギーを蓄え、利用先に運ぶことができますことから、これを活用することにより、本道の強みを生かしたエネルギーの地産地消はもとより、低炭素で、安全、安心な社会づくりや、新たな環境産業の育成振興にも寄与することが期待されるところであります。
 このため、道といたしましては、風力やバイオマス等の地域資源と利用ニーズに応じ、製造から、輸送、貯蔵、利用までのサプライチェーンの構築のための実証事業に、産学官が連携して取り組んでいるところであり、今後、
水素製造の経済性なども踏まえながら、本道の再生可能エネルギーのポテンシャルを広げる、より効率的な水素サプライチェーンの構築に取り組んでまいります。

(六) 水素市場が形成される日
 現在、再生可能エネルギー由来の電力は、固定価格買い取り制度により売買されております。
 しかし、水素発電が商用化されると、大量の水素需要が発生します。需要のあるところにはビジネスが生まれます。
 再生可能エネルギーでつくられた電気を直接売るのではなく、その電気で製造した水素が売られるケース、つまり水素市場が形成される日が来ると私は考えております。知事の所見及び対応について伺います。

答弁(知事)
 水素社会の形成についてでありますが、国の水素基本戦略では、2050年を視野に、海外の未利用エネルギーによる低コストな水素と、国内の再生可能エネルギー由来の水素の導入拡大により、水素発電やFCVなどの需要を賄う体制を目指しているところであります。
 今後、水素の利用が拡大し、
安価で安定した水素を供給する市場が形成されていくためには、大量製造、広域輸送を可能にする技術開発や低コスト化に加え、水素の環境価値を評価したインセンティブの導入等が重要になると考えるものであります。
 道といたしましては、こうした国の長期戦略や水素市場の形成に向けた動きを的確に捉え、
本道に豊富に賦存する再生可能エネルギーと製造・利用技術を活用し、CO2 フリー水素による低炭素社会の実現に貢献できるよう、産学官が一体となって取り組んでまいります。



五 科学技術振興


   最後は、科学技術の振興についてです。
 来年度から2022年度までの北海道科学技術振興計画がスタートいたします。食、環境・エネルギー、医療などの各分野にわたり、本道経済や道民生活を科学技術の側面から支えようというものであり、基本的な考え方に異議を唱えるものではありません。
 しかし、先ほど来指摘してまいりました本格的な水素社会の到来という視点で計画を見たとき、必ずしも、時代の大きな流れに即したものとは言いがたいものを感じます。
 そこで、以下伺います。

(一) 環境・エネルギー分野における研究開発

 本年度で終了する第2期計画を、水素エネルギーシステムの技術開発を行ってきたと総括していますが、誰が、どこで、どのようなシステム開発を行ってきたのでしょうか。道総研、とりわけ工業試験場における取り組みとの関連において明らかにされるべきであります。
 また、基本目標として将来像が示され、水素エネルギーなどを活用する低炭素社会の取り組みが進み、エネルギー自給、地域循環の取り組みが広がっていると記述されております。
 しかし、極めて抽象的に過ぎます。より具体的にイメージが湧く水素社会を示すべきと考えます。
 さらに、道内で進める主な研究開発分野として、エネファームやFCVの導入促進など、水素エネルギーの利活用に向けた取り組みを進めるとされています。確かに、家庭用燃料電池 ―エネファームや、燃料電池自動車 ―FCVの普及は大切です。
 しかし、これらは、既に研究開発の段階は終えているのです。国が既に始めている水素発電分野の研究開発こそが求められます。
 最後に、5年間の重点化プロジェクトが示されています。
 再生可能エネルギーから製造した水素を活用するサプライチェーン構築に向けた取り組みが進んでいるとした上で、積極的に関連企業・団体を支援・誘致し、実証研究プロジェクトの集積を図るとの記述にとどまっているのです。
 支援や誘致、集積を図ることはとても大切です。
 しかし、より重要なのは、道として、いかに主体的に取り組むかではないでしょうか。
 以上の4点をあわせて伺います。

答弁(阿部経済部長)
 科学技術振興計画に関し、環境・エネルギー分野の研究開発などについてでありますが、本道では、室蘭工業大学等が、平成27年から、苫前町で風力発電から水素をつくる技術開発を行っているほか、道総研においては、バイオマスなど、多様なエネルギー資源の利用技術の開発を行っているところでございます。
 次期科学技術振興計画においては、環境と調和した持続可能な社会の実現を目標の一つとして、再生可能エネルギーの電力などで製造されたCO2 フリー水素が活用される社会などを将来像として掲げ、
今後5年間で、水素サプライチェーンの構築に向けたエネルギーの新技術の開発や導入の促進に重点的に取り組むこととしております。
 こうした取り組みを進めるためには、道内の大学や道総研、企業等が、研究開発から事業化、実用化まで、連携して取り組むことが必要なことから、道といたしましては、国の動きや技術開発等の状況を把握し、関係機関・団体等の協力を得ながら、
実証研究プロジェクトの集積などを図る考えでございます。

(二) 再生可能エネルギーの活用

 既に案として示されている第3期計画を今さら変えるべきだとは申しません。問題の核心は、本計画を踏まえ、水素社会の本格的到来に備えた、本道ならではの、他県に追随を許さない政策展開を実行できるか否かです。
 水素を製造、貯蔵、輸送、利用する一連の過程には、極めて多様な切り口があります。
 例えば、福岡県は、燃料電池自動車用タンクの耐熱、耐震、耐圧のテストを行う実験施設を建設し、これまでは米国に試験を委託していたトヨタやホンダなどの開発メーカーをクライアントとして獲得し、大成功をおさめております。
 また、九州大学では、水素の貯蔵、輸送に関する研究が進められています。水素を気体のまま貯蔵するのではなく、元素レベルまで分離した水素と金属元素を結合させることで、個体として貯蔵、輸送しようというのです。より軽く、よりコンパクトな水素化物を追い求めています。
 水素社会との関連における本道の優位性は、言うまでもなく、豊富な再生可能エネルギーのポテンシャルです。
 再生可能エネルギーによる水素製造は、他の都府県ではまねのできない、本道ならではの研究分野となるでしょう。自信を持って大胆に進めるべき分野と考えます。所見を伺います。

答弁(知事)
 再生可能エネルギーの活用などについてでありますが、本道は、太陽光や風力、バイオマス、地熱などの多様なエネルギー資源に恵まれておりますことから、こうした資源を効果的に活用し、水素製造分野においても、その強みを発揮していくことが重要と認識いたします。
 このため、道といたしましては、道総研の戦略研究として、広く地域に分散するエネルギー資源を有効利用するためのモデルの構築に向けた研究開発を進めているほか、バイオマスの活用といった
地域の独自性に即した再生可能エネルギーによる水素の製造や貯蔵、輸送、利用に向けた実証事業に参画するなど、本道が持つ優位性を生かした研究開発を促進してまいります。



 再質問

再質問をいたします。

 知事の答弁により、幾つかの大切な点が明らかとなりました。

一 新エネの位置づけ

 まず、新エネの位置づけについてであります。
 知事は、先ほどの答弁で、水素は新たなエネルギーの選択肢となり得ると答弁されました。北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例の施行規則では、新エネとは何かが定義されております。
 そこで伺います。
 この際、条例の施行規則を改正し、水素を、カテゴリーとしての新エネルギーと正式に定義すべきと考えますが、いかがでしょうか。

答弁(知事)
 水素社会に関し、まず、水素の利活用についてでありますが、水素は、本道の豊かな再生可能エネルギーの潜在力を生かし、その製造から、輸送、貯蔵、利用まで、エネルギーの地産地消を広げることにより、環境と経済が調和する水素社会の実現につながるものと考えるところであり、道といたしましては、こうした本道の特性を踏まえ、新たなエネルギーの選択肢となり得る水素の利活用の拡大に向け、着実に取り組んでまいります。

二 水素事業と新エネ導入促進基金

 次ですが、科学技術の振興に関し、再生可能エネルギーの活用について伺ったところ、再生可能エネルギーを効果的に活用し、水素製造分野においても、その強みを発揮することが重要との認識が示され、その上で、研究開発を促進していくと答弁されました。
 我が国の水素技術は、世界のトップ水準と言われております。水素技術の中で、道内における再生可能エネルギーによる水素製造の研究は、他の都府県の追随を許しません。
 つまり、日本の水素技術が世界のトップレベルであり、北海道の再生可能エネルギーによる水素製造が、他の都府県の追随を許さないのであれば、本道は、科学技術におけるこの分野で、世界で1番の地位を占める可能性を持っているわけであります。
 そこで伺います。
 水素、とりわけ、再生可能エネルギー由来の水素にかかわる事業は、新エネルギー導入加速化基金の支援対象となります。水素製造に関して意欲ある地域や企業を後押しすべきと考えますが、いかがでしょうか。

答弁(知事)
 水素を活用した新エネルギーの導入拡大についてでありますが、水素は貯蔵や輸送が可能であり、全道の豊富な再生可能エネルギーのポテンシャルを生かすことができる分野と認識いたします。
 道といたしましては、新エネルギー導入加速化基金により、風力による電気を水素に変換して地域で活用するモデル事業の取り組みを支援するとともに、市町村にコーディネーターを派遣し、水素の活用方法に関する助言など、再生可能エネルギーからつくられる水素に係る取り組みを支援してきているところであり、今後とも、地域や企業の方々と連携しながら、新エネルギーの導入拡大に取り組んでまいります。

三 本道を再生可能エネルギー基地に

 次ですが、洋上風力発電のポテンシャルについて伺ったところ、洋上風力発電の設備容量から、設備利用率を30%と仮定して ― 恐らく、もう少し高いと思うのですけれども、年間の発電電力量を試算すると、標準家庭の約3億8000万世帯分の年間使用量に相当すると答弁されました。驚くべき数字であります。
 この際、北海道は、我が国における再生可能エネルギー基地を目指すべきです。いかがでしょうか。
答弁(知事)
 新エネルギーの導入拡大についてでありますが、本道には、洋上風力を初め、さまざまな新エネルギーが豊富に賦存しておりますことから、道といたしましては、我が国全体のエネルギーの多様化に貢献していくという考えのもと、新エネルギーが本道の主要なエネルギー源の一つとなるよう、新エネルギー導入加速化基金を活用するなどして、一層の導入拡大に取り組んでまいります。

四 北本増強は国策で

 最後ですが、北本連系線の増強について伺ったところ、本道の新エネのポテンシャルを我が国全体で生かせるよう、北本連系線の増強を国に求めると答弁されました。
 我が国全体で生かすという発想に異議はありません。ただいま申し上げました、北海道を我が国における再生可能エネルギー基地にするという私の考え方とも一致しております。
 しかし、それを可能とするためには、現在の北本連系線の容量は余りにも脆弱です。本州と九州の連系容量は556万キロワットで、本州と四国の連系容量は380万キロワットであります。さらに、東北と関東の連系容量はもう一桁違います。
 そこで、一般的に国に増強を求めるのではなくて、本道の再生可能エネルギーを全国で活用したい国が国策として主体的に増強すべきだと私は考えております。国に頼るのではなくて、国に頼られる北海道を目指すべきであります。
 国全体を支える電力を送電するに足る連系線の容量が求められます。あわせて知事の所見を伺います。
答弁(知事)
 地域間連系線についてでありますが、全国でトップクラスの新エネルギーのポテンシャルを生かし、我が国全体のエネルギーの多様化に貢献していくためには、他地域に比べて特に脆弱な地域間連系線の拡充が重要であり、不可欠であります。
 道といたしましては、こうした認識に立ち
、国の主体的な関与のもと、北本連系線のさらなる増強が行われるよう、国や電力広域的運営推進機関に対し、引き続き働きかけを強めてまいります。

 
(2018年3月7日/本会議一般質問)

HOSHINOTAKASHI