2013年3月 第一回定例会一般質問 HOSHINOTAKASHI


質問(星野)−1−知事の政治姿勢〜「建国の気概」について

 まず、建国の気概についてです。
 私は、道議会議員になってから18年がたちます。与党として8年、野党として10年です。二元代表制の地方政治にあって、与党だから賛成する、野党だから反対するという立場はとってまいりませんでした。
 例えば、与党時代、知事と札幌市長が事前合意した丘珠空港のジェット化に全力で反対してきました。逆の意味で、野党としての10年間も同様です。質疑も、当面する課題について具体的に質問し、具体的にお答えいただくという手法に腐心をしてまいりました。結果を出すことが、政治の役割であり、議員の仕事であると考えているからであります。
 しかし、きょうは少し趣を変えます。道政上の具体的な課題について正しい答えを導き出すためにも、北海道が目指すべき中長期的理念と方向性を確立することが必要と考えるからであります。
 旧自民党政権時代に、地方切り捨ての憂き目に遭った北海道は、民主党政権時代に、新自由主義に翻弄され、再びの自民党政権で、地方固有の財源である地方交付税を人質にとられる形で、振り回されようとしています。
 しかし、北海道には、中央政府がどう変わろうと、自立できる潜在力があります。植民地的経済構造を強いられてきた本道は、今こそ、その隷属的な立場を返上し、将来の自立的な姿を描くときと考えます。
 知事は、道政執行方針の中で、食産業立国を推進するとされています。
 そこで伺います。
 立国と言うからには、知事には、一つの国をつくり上げようという強い気持ち、つまり建国の気概がおありと受けとめられますが、いかがでしょうか。
 唐突に、北海道独立論を主張するつもりは毛頭ありません。以下の質問を聞かれた皆さんの中には、何を夢みたいなことを言っているのだと思われる方もいるかもしれません。
 しかし、人間は、いつか実現することを超えて想像力を膨らますことはできないのです。裏返して言えば、抱いた夢は必ず実現するのです。問題は、夢を持つか否か、そして、夢を持てたのなら、そのために今何をすべきかを考えることです。
 私が考える将来の北海道、それは、1国2制度に基づく、真に自立した北海道です。世界を相手にすることはもとより、津軽海峡以南の日本を相手にビジネスをする北海道です。そして、国の内外に打って出るチャレンジ精神が旺盛な北海道でもあります。見方を変えた瞬間、将来の方向性を見据えた瞬間、これまで困難と思われてきたさまざまな課題に光が当たることはよくあることです。
 さて、さきの、建国の気概という質問に対する答弁が、立国と言ったけれども、それは単なる言葉のあや程度というものであれば、以下の私の質問はすべて空回りになります。その場合には、すべての質問を取り下げますので、答弁は不要です。知事には、国をつくろうという強い気概があると信じ、以下伺ってまいります。

答弁(知事)−1−知事の政治姿勢〜「建国の気概」について

  最初に、私の政治姿勢についてでありますが、今後、食料需給の逼迫や資源の希少化、環境制約などが一層進むことが見込まれる中、安全、安心な食を初め、水や新エネルギー資源などの北海道価値は、ますます貴重なものになってくるものと認識をいたします。
 一方、本道経済は、公共投資の大幅な減少などから、厳しい状況が続いているところではありますが、これまで、自立型経済の実現に向けて積極的に取り組んでまいっている中、食や観光産業、再生可能エネルギー事業などで、将来につながる芽が育ちつつあるとともに、北海道に対するアジア諸国の注目度は着実に高まってきていると実感をいたします。
 私は、こうした動きをしっかりととらえ、これまでの取り組みをさらに加速しながら、知事就任以来、一貫して目指してきました新生北海道づくりを推進してまいりたいと考えているところであり、世界でここにしかない、すばらしい国をつくり上げるという気概を持って、全力で取り組んでまいります。

 質問(星野)−2−ローカルサマータイムの導入

  次に、ローカルサマータイムの導入についてです。津軽海峡を挟んで、夏の間、本道と中央政府の間に時差を設ける話です。
 道は、平成17年から2年間、札幌商工会議所が行ったサマータイム実証実験に参加しています。その後、洞爺湖サミットを控えた平成19年から2年間、道の独自事業として、職員のサマータイムを実施しました。
 商工会議所は、独自に結果検証をしていますが、道の場合は、残念ながら、やりっ放しの感を否めません。これでは、サミットに向けたパフォーマンスだったのかと指摘されても仕方がありません。
 そこで伺います。
 4年間のサマータイム実験は一体何だったのでしょうか。きちんと総括をすべきです。伺います。
 商工会議所の検証によると、幾つかのメリットを示した上で、デメリットとして、コンピューターシステムの変更など莫大な初期投資がかかること、あるいは、本州との時差が生じることなどが挙げられています。しかし、これは、見方を変えれば、大きなメリットに転ずるものであります。
 例えば、サマータイムにかかわる新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。また、本州との時差は、支店経済とやゆされてきた経済構造を一変させる可能性もあります。本社の開業より1時間早く、本道の支店は世界とのビジネスを始めることになるからであります。
 中央政府との間に時差を設けることこそ、さまざまなメリットが発生すると考えますが、いかがでしょうか、伺います。
 本道が高緯度にあり、夏の朝が、津軽海峡以南に比べ極めて早いという現実は、当時も今も全く変わっていません。だとすれば、前回の実験の検証、総括を踏まえ、次のステップに進むべきです。あわせて伺います。

 答弁(知事)−2−ローカルサマータイムの導入

  次に、サマータイム導入のメリットなどについてでありますが、これまでの社会実験の報告等から、交通や通信などにおける新たなコスト負担、国内の他地域との商取引などにおける時間的な制約といった課題も想定されるところであり、経済活動や道民生活全般に大きな影響があることを考慮する必要があるものと考えます。
 一方、北海道は、夏場の日照時間が全国で最も長い地域であり、サマータイムの導入は、本道の独自性をアピールし、個性豊かなライフスタイルの創出や地域の活性化などにつながる可能性も持っているものと考えます。
 サマータイムは、北海道の持つ多様な特性を生かす取り組みであると考えているところでありますが、お尋ねの、津軽海峡を挟んで時差を設けることにつきましては、北海道全体で取り組むことが必要でありますことから、その実現に向けては、さまざまな課題にどのように対応するかなどを含め、道民全体としての理解の広がりが必要であると考えるところでもあります。
 なお、実証実験の検証については、担当の部長から答弁をさせていただきます。

  答弁(荒川裕生(総合政策部長)−2−ローカルサマータイムの導入

 サマータイム実証実験の検証などについてでございますが、道では、平成17年から、札幌商工会議所の主催による北海道サマータイム実証実験に参加いたしますとともに、平成19年からは、道独自に、エコ・サマータイム実践PR事業を実施いたしました。
 これらの取り組みにより、サマータイムを実施していない地域や企業等との時間のずれ、実質労働時間の増加などの課題が明らかになった一方で、サマータイムに関する道民の皆様への一定の周知が図られるとともに、環境に配慮したライフスタイルへの意識向上といった効果が明らかになったところでございます。

 質問(星野)−3−再生可能エネルギー発電所

 次に、日本の再生可能エネルギー発電所としての地位についてです。
 欧州における再生可能エネルギー導入促進を支えているのは、国境をまたぐ送電網の整備です。広域で電力を融通し合うことにより、供給の安定化が図られ、大胆な導入が可能となるのです。
 翻って、本道と本州をつなぐ送電線の北本連系の実態は極めて脆弱なものであります。北本連系の規模からして、国では、北海道の大規模太陽光発電について、買い取り限度を40万から60万キロワットとしています。
 ところが、国が認定している買い取り規模は、昨年11月末で、既に、メガソーラーが40万キロワット、再生可能エネルギー全体で約56万キロワットとなっています。このままでは、再生可能エネルギーのこれ以上の導入は不可能です。この現実をどう見られますか、伺います。
 他方、道内の再生可能エネルギー潜在力は、国が実施した平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査によりますと、風力で何と1億4000万キロワット、太陽光で752万キロワットと言われています。この潜在力を形にするために、知事は何をされるのでしょうか、あわせて伺います。
 北本連系の容量は60万キロワットであり、本州と九州の連系は557万キロワットで、比較をして、けたが違っているわけです。
 現在の連系は、非常時のためのものでありますが、全国で効率的に電力融通がされれば、再生可能エネルギーの導入可能限度は大幅に拡大します。国づくりを進めようとするとき、北本連系の増強は、本道にとって生命線の一つとも言えます。
 中央政府との協議を進め、北本連系の位置づけを、非常時の融通から、再生可能エネルギー導入促進のための融通へと変更すべきであります。いかがでしょうか、伺います。
 そうした場合、連系増強は、電気事業者の責任ではなく、中央政府の責任においてインフラを整備すべき課題と考えますが、いかがでしょうか、あわせて伺います。
 福島原発の過酷事故から2カ月たった2011年5月、英国スコットランドの自治政府は、欧州大陸の自然エネルギー発電所としての地位を我が国は確立すると宣言しました。さらに、2020年までに、国内電力消費量の2倍を発電するという目標を掲げました。その半分以上は自然エネルギーで賄うというのです。海峡を流れる潮流の潮力発電ポテンシャルが、こうした発言を支えているようであります。
 本道にも、スコットランドにまさるとも劣らない潜在力があります。日本の再生可能エネルギー発電所としての地位を宣言する権利が北海道にはあるのです。
 本道に豊富に賦存する再生可能エネルギーの潜在力を踏まえ、津軽海峡以南の追随を許さない先進的地位を樹立する意気込みが求められます。いかがでしょうか、伺います。
 さてここで、当面の課題に触れます。
 国が指摘するように、現状の北本連系の規模では、これ以上の参入は困難です。にもかかわらず、多くの事業者が参入に意欲を示しています。この問題は具体的に解決しなければなりません。
 国は、再生可能エネルギーの導入促進を目的として、電気事業者に厳格な義務を課しています。同時に、事業者が接続を拒否するケースも想定し、その場合の扱いを省令で明確に規定していて、その中に、いわゆる抑制ルールというものがあります。明確な理由がある場合は、1年のうち1カ月に限って、接続を拒否できるという内容です。
 そこで伺います。
 現状の北本連系規模を前提とした場合、これ以上の新規参入が不可能であるなら、この抑制ルールを北海道に限定して、例えば、2カ月にするなどの措置をとる、つまり、再生可能エネルギー発電事業をシェアする発想も必要です。これにより、大幅な新規参入事業者増が見込まれると考えます。知事の見解を求めます。

  答弁(知事)−3−再生可能エネルギー発電所

  次に、新エネルギーの導入についてでありますが、本道は、豊富な新エネルギー資源に恵まれており、太陽光発電を初め、多くの計画が検討されておりますが、道内の各地域において、それに見合う送電網の容量がない場合がありますほか、北本連系線を含め、系統全体の規模が小さいことから、新エネルギーの出力変動に対する調整力に限界があるものと認識をいたします。
 このため、道では、国に、送電網や北本連系線などの必要な基盤整備を要請し続けているところであり、今般、送電網や蓄電池の整備に関する実証事業が予算計上をされているところであります。
 今後、これら施策の効果的な実施を国に働きかけるとともに、道といたしましても、新エネルギー導入の推進役となる人材の育成や、地域における導入可能性調査への助成、エネルギー地産地消のモデルとなる取り組みの補助など、きめ細やかな支援を実施し、新エネルギーの導入促進に着実に取り組んでまいります。
 次に、本道の役割などについてでありますが、本道は、豊富に賦存する新エネルギー資源を初め、積雪寒冷地ならではの雪氷冷熱や、高度利用が望まれる石炭資源、安定的な利用が可能な地熱など、多様なエネルギー資源に恵まれております。
 こうしたことを踏まえ、道では、中長期的な視点から、日本全体のエネルギーの安全保障に貢献していくバックアップ拠点としての北海道の役割と可能性について、国に対し、提案をしてきているところであります。
 私といたしましては、今後とも、このような観点に立って、送電網など、必要な基盤整備を国に働きかけるとともに、地域や企業の皆様と連携しながら、新エネルギーの導入促進、環境・エネルギー産業の育成振興を図り、本道を、我が国における再生可能エネルギーの先進地とする気概を持って取り組んでまいる考えであります。
 なお、北本連系線などについては、担当の部長から答弁をさせていただきます。

   答弁(山谷吉宏経済部長)−3−再生可能エネルギー発電所

 日本の再生可能エネルギー発電所としての地位に関し、北本連系線などについてでありますが、本年2月にまとめられた、政府の電力システム改革専門委員会報告書では、全国規模での需給調整機能の強化や、広域的な系統計画の必要性に対応するため、新たに、広域的な系統運用を行う機関を設立すること、再生可能エネルギーの導入拡大が進む中で、さまざまな事業者が送配電網を利用できるよう、送配電網の中立的な運営が必要となることなどが掲げられたところであり、国では、今後、これらに向けた取り組みを、必要な検証を行いながら、段階的に実施していくことを検討していると承知いたしております。
 道といたしましては、北本連系線は、これまで、本道の電力需給の安定に寄与してきており、今後は、同時に、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大にも重要な役割を果たすものと認識しており、こうした北本連系線を含めた地域間連系設備の強化に向け、国を挙げて取り組むよう、求めてまいる考えであります。
 次に、新エネルギーの新規参入の拡大についてでありますが、国では、北海道は系統規模が小さく、太陽光発電について、40万から60万キロワット程度の受け入れ量で限界となる可能性もあるとして、北電に対し、受け入れ量を増大させる方策の検討を指示するとともに、国みずから、いわゆる抑制ルールの見直しなどを含めた対応策の検討にも取り組んでいるものとお聞きしております。
 道としては、その検討状況を注視するとともに、道内の事業者の動向を把握しながら、新規参入の拡大が図られるよう、適切に対応してまいる考えであります。

  質問(星野)−4−道外移出再生可能エネルギー発電税

 次は、道外移出再生可能エネルギー発電税についてです。
 電力の完全自由化が進められ、発送電分離も現実味を帯びてまいりました。だれでも、どこでも発電でき、売電先も自由になると、安い土地を目指して、多くの再生可能エネルギー発電事業者が道内に進出することが想定されます。そして、例えば、道内で発電した電気を東京電力などに売るということも可能になるのです。
 欧州の再生可能エネルギー発電事業者は、アフリカにまで進出し、太陽熱発電を大規模に展開しています。これに対して、欧州資本が、安い値段で土地を借りて施設をつくり、電力を持っていく、我々にはどんな価値がもたらされるのか、交渉が必要だという、モロッコの電力業界関係者の発言が、新聞紙上で取り上げられていました。
 まさに同様の事態が北海道に起きる可能性があります。発展途上の地域に先進地域資本が押し寄せてきて、果実だけを持ち帰るという植民地的経済構造と言えます。知事はこうした事態をどうお考えですか、伺います。
 この際、日本を相手に商売するという発想が求められます。道内で生産された電力が本州事業者に売電されたのでは、モロッコの例と同じです。道内にも価値がもたらされなければなりません。
 さまざまな政策手段があるでしょうが、国をつくる気概で道政執行を行うのであれば、法定外税を課すということも選択肢の一つと考えます。
 目的税とすることで、税収を原資に、さらに再生可能エネルギー導入促進に資することが可能となります。もちろん、課税客体をどうするのか、捕捉をどうするのかなどの課題は残りますが、それらは、単に乗り越えるべきハードルにすぎません。
 仮称ですが、道外移出再生可能エネルギー発電税の将来的導入についても視野に入れるべきと考えます。いかがでしょうか。
 道外に移出される自然エネルギー事業に対する課税について伺いましたが、課税客体はまだまだあるはずです。
 東京都は、1泊1万円以上の宿泊客に対して、100円の目的税を課し、観光振興の財源の一部にしています。年間で10億円程度の税収があるようです。
 自動車部品工場やIT産業を誘致する場合、現在は、来てもらうために、税制上の優遇措置をとっています。しかし、道内立地の優位性が正しく認識されるならば、課税されても、なお、道内進出を希望する本州資本もあるはずです。
 一つの国をつくる意気込みなら、津軽海峡以南の勢力に、北海道の価値を安売りする必要はありません。どのような分野で課税が可能か、可能性について検討することは意義があると考えます。いかがでしょうか。

   答弁(知事)−4−道外移出再生可能エネルギー発電税

  次に、発電事業における本道への経済効果についてでありますが、本道においては、固定価格買い取り制度の創設を機に、食品製造業や建設関連業などの道内の法人を含め、道内外の企業によるさまざまな取り組みが進んでおり、こうした動きは、本道に豊富に賦存する新エネルギー資源の有効活用につながるものと認識をいたします。
 私といたしましては、御指摘の点も踏まえ、これらを地域経済の活性化や雇用の創出に結びつけることが重要と考えているところであり、道内の企業の技術開発を支援するとともに、本道への立地を検討している企業に対し、道産部品・部材の活用等を強く要請するなどして、地域における産業おこしや新たな商品開発の促進などに取り組み、新エネルギーの導入拡大を通じて、道内における経済効果がより高まるよう、努めてまいる考えであります。
 なお、課税の可能性などについては、担当の部長から答弁をさせていただきます。

   答弁(荒川裕生(総合政策部長)−4−道外移出再生可能エネルギー発電税

  道外移出再生可能エネルギー発電税等に関し、課税の可能性についてでございますが、新たな税の導入は、納税者の負担を伴うものでありますことから、広く関係する皆様の十分な理解を得ることが必要であり、景気動向なども十分に見きわめながら、慎重に検討する必要があると考えております。
 同時に、道といたしましては、地域の特性を生かした自主財源の確保は重要な課題であると考えており、税収の増加といった視点を含め、新エネルギーの開発、導入の促進などを通じた経済の活性化、自立化に努めてまいる考えでございます。

    答弁(山谷吉宏経済部長)−4−道外移出再生可能エネルギー発電税

  道外移出再生可能エネルギー発電税等に関し、新エネルギーの導入促進についてでありますが、道では、法定外税として、核燃料税や循環資源利用促進税を導入しているところでありますが、こうした法定外税の新設に当たっては、納税義務者の理解はもちろんのこと、負担の公平性や、国全体の施策との整合性などを十分に見きわめていかなければならないものと認識いたしております。
 道といたしましては、本道における新エネルギーの導入促進を地域の活性化に結びつけていくために、今後とも、多様な政策手段について、さまざまな観点から幅広く検討を行い、着実に取り組んでまいる考えであります。

   質問(星野)−5−1次産品の道外移出制限

   次に、1次産品の道外移出についてであります。
 さまざまな資源を持つ発展途上国における貿易政策の変遷を知ることは、豊富な1次産品を生産し、建国の気概を持って、自立の道を模索する本道にとって、意義深いものがあります。
 例えば、インドネシアですが、豊かな森林資源を有する同国は、1969年に第1次5カ年計画をスタートさせました。しかし、外資主導型経済計画だったため、国内資源を未加工のまま流出させることになり、国内企業の育成を阻害し、失業者を増大させるなど、失敗に終わったと聞きます。
 同国は、このことを教訓としながら、1970年代後半には、丸太輸出路線から木材加工工業化路線へ軌道修正をしました。先進国資本に支配されてきた自国資源に主権を行使し、自国経済の発展に役立てようとしたわけです。消費市場頼みの生産から、売り手優位の市場を創造しようという意図が読み取れます。
 1985年には、丸太輸出は全面禁止となり、合板輸出に奨励金を出すなど、強力な国策が展開されています。結局、1998年には、IMF勧告により、貿易規制は撤廃され、輸出税も30%に引き下げられましたが、およそ20年間に及ぶ自立に向けた取り組みには、学ぶものが多いと言えます。
 インドネシアを初めとする東南アジアの原木輸出規制の取り組みを、類似する経済構造にある本道としてどう評価しますか、伺います。
 本道は、日本の食料基地と言われるように、実に多くの農畜水産物が生産されています。道として、それらの高付加価値化に向け取り組まれていることは承知しておりますが、決して十分とは言えません。
 原材料が丸ごと津軽海峡以南に移出され、そこで加工され、付加価値がついていくという現在の構造は、かつての東南アジアと、そこから原木を輸入してきた先進国との関係に酷似しています。
 建国の気概を持つ知事なら、みずからの国内にある1次産品という、極めて大きな資源に主権を行使するべきであります。例えば、1次加工されていない1次産品は、津軽海峡を渡らせないという決意です。知事の見解を求めます。

    答弁(知事)−5−1次産品の道外移出制限

  次に、1次産品の付加価値向上についてでありますが、本道の農林水産業は、国民の皆様に、安全、安心で高品質な食料を届けるとともに、その生産活動を通じて、地域の経済や社会生活の基盤を支えるという重要な役割を果たしております。
 また、道内で生産された農林水産物を道内で加工するなどして、付加価値を高めていくことは、産業の振興や雇用の創出、さらに、農林水産業の所得の向上などを図る上で、大変重要なことであります。
 このため、私といたしましては、決意を持ってという御提言の趣旨を十分に踏まえ、本道が誇る、すばらしい資源を最大限に生かし、国内外に打って出るという気概を持って、本道の1次産品の付加価値向上に全力で取り組んでいく考えであります。
 なお、東南アジアの原木輸出規制については、担当の部長から答弁をさせていただきます。

     答弁(岡崎博繁水産林務部長)−5−1次産品の道外移出制限

 東南アジアの取り組みについてでありますが、東南アジアの主要な木材産出国であるインドネシアとマレーシアでは、1980年代から90年代にかけて、国内産業の振興などの観点から、丸太輸出の全面禁止など、規制を強化するとともに、合板輸出奨励金などにより、木製品の輸出を促進してきたところでございます。
 こうした輸出の規制などにつきましては、国際貿易におけるルール上の問題がありますが、地域の森林から産出された丸太を地域で加工し、付加価値を高めていくことは、豊富な森林資源を有する本道にとりまして、産業の振興や雇用の創出を図る上で重要であると考えております。

    質問(星野)−6−小水力発電と水利権

 次は、小水力発電と水利権についてです。
 国をつくる問題と水の問題は切り離せません。
 水利権は、本道と津軽海峡以南の日本で、その歴史的背景が大きく異なります。
 西暦718年、大宝律令を一部修正して編さんされた養老律令の中に取水権として登場したのが、現在の水利権の始まりとされています。いわく、水が欲しい人は、先に取水していた人の下流からとること、水車を使って水を揚げる人は、過去に水を使っていた人全員の同意をとることと書かれていたようです。
 近代に入り、1896年に旧河川法が公布されたときに、奈良時代以来、慣行的に成立していた取水権は、河川法による管理体系に組み入れられたのです。とうとうと水が流れているにもかかわらず、権利的には一滴も水がないことになっているという不可思議な現象の遠因です。
 近代国家になって以来、時の政権は、水利権の整理を幾度となく試みたが、失敗したと聞いています。
 近代国家以前のしがらみのない本道と水利権について、知事はどのような所見をお持ちでしょうか、伺います。
 また、本道と津軽海峡以南の日本を比較した場合、水利権をめぐる実態には大きな相違があると考えますが、あわせて伺います。
 さて、河川法第23条によれば、河川から取水し、全水量が河川に戻る小水力発電でも、河川管理者の許可が必要とされています。どうして、全水量が河川に戻る場合も水利権が必要なのか、私には理解できません。
 古来、水車は、水をくみ上げる役割と、動力としての役割がありました。日本書記によれば、動力としての水車の最初の記述では、西暦610年に、高麗の王が水車を利用したうすを日本にもたらしたとされています。
 ここからすると、日本で最初に水利権の概念が確立した718年当時には、既に二つの役割を持った水車があったことになるのです。にもかかわらず、水車を使って水を揚げる人は云々とあるように、水力を利用したうす、つまり、エネルギーを生み出す水車は、水利権の対象になっていなかったのです。
 小水力発電を展開する際、本来、水利権は関係ないと考えますが、いかがでしょうか。
 現行法制では、確かに、河川法により、許可が必要とされています。しかし、それは、奈良時代から引きずってきた、網の目のように錯綜する水利権という、津軽海峡以南の日本固有の理由に基づくものと推察をされます。事情の異なる北海道に、中央政府が水利権を行使するのは不合理です。
 小水力発電を事業として展開しようとする場合、水利権許可という煩雑な手続が障害になっているケースが散見されます。国をつくる気概をお持ちの知事は、1国2制度をちゅうちょされてはなりません。
 本道においては、小水力発電に伴う水利権許可は知事の権限とすべきであり、廃止も視野に入れるべきと考えます。いかがでしょうか。

     答弁(知事)−6−小水力発電と水利権

  次に、小水力発電における流水の占用許可手続についてでありますが、北海道は、津軽海峡以南の日本における水の使用実態とは異なっており、私といたしましては、小水力発電は、環境に優しく、小規模ながら安定した電力が確保でき、本道の豊かな水資源を生かせる有効なエネルギーでありますことから、積極的な活用を進める必要があるものと認識いたします。
 また、国では、再生可能エネルギーの導入を加速するため、新年度より、河川法施行令の一部を改正し、都道府県知事が管理する1級河川における、1000キロワット未満の小規模な水力発電について、許可権限を知事に移譲するなど、小水力発電の許可手続の合理化、簡素化を進めているところであります。
 道といたしましても、電気事業者から要望のある規制緩和や、小水力発電の導入が円滑に進むよう、さらに国に対して働きかけてまいりたいと考えます。
 なお、流水の占用許可の実態などについては、担当の部長から答弁をさせていただきます。

      答弁(武田準一郎建設部長)−6−小水力発電と水利権

 小水力発電と水利権に関し、初めに、流水の占用の許可についてでございますが、水は、人間の生存はもちろんのこと、動植物の生存や産業活動等にとって必要不可欠なものであり、その多くは、河川の流水に依存しているところでございます。
 その一方で、河川の流水には限りがあるため、比較的、水量が豊富な本道であっても、流水の使用を無制限に放置することは、本来、河川が有する、治水、利水、環境という機能を果たせなくなるおそれがあり、河川を使用する方々に混乱を生じさせる事態となることから、限られた流水の使用の秩序を図ることを目的といたしまして、河川法第23条において、流水の占用の許可が規定されているものと認識しているところでございます。
 また、津軽海峡以南の日本では、いわゆる慣行水利権といった、水の使用実態が不明確なものがございますが、本道におきましては、歴史も浅く、そのような実態はないものと承知しているところでございます。
 次に、小水力発電における流水の占用についてでございますが、小水力発電は、河川に、直接、水車を設置して発電する場合や、一たん河川から水を引き込み、水路に水車を設置して発電する場合のどちらにおきましても、河川に工作物を設置して行うものでございます。
 このため、流水の占用の許可を受ける者は、河川法施行規則で定められた図書を提出することとされておりまして、河川管理者は、国が定めた審査基準に基づき、河川の流量が減少する区間が生じないか、それにより、下流の利水者の取水や動植物などの生態系に影響を与えないか、さらに、大雨などの洪水時に支障とならないかなど、河川管理上の支障の有無につきまして確認することとされているところでございます。

     質問(星野)−7−北海道の建国記念日〜道民の日制定

   最後の質問は、北海道の建国記念日についてであります。
 ここまで、何点かについて伺ってまいりましたが、そのすべてに貫くコンセプトは、国をつくる気概です。
 民主党会派には、「道民の日」プロジェクトがあります。かつて、知事にこの話を伺った際、非常に興味深い取り組みであり、道としても応援する旨の答弁をいただきました。心強い限りです。
 道民の一人一人が、心に、建国の気概を決意として秘めるならば、そこにこそ、知事が言う自立した新生北海道が待ち受けているでしょう。言いかえるならば、未来への扉を開く決意でもあるからです。
 知事に建国の意気込みがあるのなら、知事みずからが、建国記念日として意義を持つ「道民の日」を設定し、道民が故郷に思いをはせ、静かに建国の決意を固める日にされてはどうでしょうか、伺います。
 以上、私の質問を終わります。

      答弁(知事)−7−北海道の建国記念日〜道民の日制定

 最後に、「道民の日」の制定についてでありますが、「道民の日」の意義については、道民の一人一人が、北海道の歴史と文化を知り、ふるさとを愛する心をはぐくみ、さらには、道民相互の連帯感と、未来に向かって前進する気概を育てるといった、多様なとらえ方があるものと認識をいたします。
 記念の日やその意義などについては、幅広い道民の方々の御意見をもとに、議論を深めて、コンセンサスを得ていくプロセスが欠かせないものであり、今後、道内の各界の御意見の把握に努め、道議会での御議論をいただきながら、「道民の日」の制定について、その意義などを見定める必要があると考えます。
 既に「県民の日」などを制定している都県においては、総じて、明治初年の県の成立時をもって記念の日としているところであり、歴史に意義を置いたものとなっておりますが、本道においては、他県と異なる独自の歴史を有しておりますことなどから、私といたしましては、未来志向でとらえることが望ましいと考えており、これは、新生北海道づくりを目指す私の政策理念とも重なるものと考えるところであります。
 以上であります。

(2013年3月/本会議一般質問)

HOSHINOTAKASHI