HOSHINOTAKASHI


2011年3月31日、街頭より訴える


きっかけは、チェルノブイリ

  私の初当選は、1995年です。
  その10年前、当時のソ連、チェルノブイリ原発で史上最悪の原子力災害が発生しました。遠く北海道でも放射性物質が検出されるなど、汚染は地球規模に広がったのです。
  その頃、環境問題などの市民運動にかかわっていた私は、原子力について猛勉強をしました。
  何万年にも及ぶ核廃棄物の環境への影響、止められない核暴走、メルトダウン(炉心溶融)の恐ろしさ、食物連鎖による放射性物質の強烈な濃縮、……
  学生時代、都立大で物理を専攻していた私は、それまで「原子力は夢のエネルギー」と信じていたのですから、大きなショックを受けたのです。
  私の中で、人類は原発への依存をやめなければ、今に大変なことになるという信念が形成されていきました。


泊原発差し止め訴訟に参加

提訴の日、左から、私、広瀬隆さん、重野広志さん

  チェルノブイリ事故をきっかけに、世論が大きく脱原発に傾く中、泊原発の建設計画は着々と進められていました。
  いてもたってもいられない気持ちの中で、仲間と共に裁判を起こそうということになりました。弁護士を立てない本人訴訟です。街頭カンパも実施。市民の皆さんから寄せられた数百万円の資金をもとに、札幌地裁に提訴しました。
  弁護士がいないものですから、出廷した電気事業者の証人に対しておこなった尋問は、今でも思い出します。
  差し止め訴訟は、結果として敗訴しました。しかし判決文に「国民の不安が高まる中、原子力に頼らない選択肢があってもいい」という一文が付記されたことは、画期的なことです。脱原発の取り組みに大きな励みとなりました。
訴状を提出する988人の原告団


初当選以来、泊原発の安全性を質疑

  阪神淡路大震災のあった1995年、私は初当選を致しました。
  道議会は、2年ごとに所属委員会が変わります。私は常任委員会は環境、経済、福祉、建設と様々経験をいたしました。しかし特別委員会は、16年間、エネルギー委員会に変わらず所属してきました。
  電気は、私たちの生活と産業活動を支える重要なエネルギーです。そして泊原発が道内電力の3分の1を担っているのも現実です。だからこそ、その安全性は徹底してチェックされなければなりません。
  私は、原発に依存しないクリーンエネルギー社会を一日も早く実現したいと考えていますが、実際問題として泊原発が稼働している以上、決して事故を起こしてはいけないのです。
  泊原発では、大小合わせて様々な事故やトラブルがよく発生してきました。タービン翼の亀裂、作業員の度重なる内部被ばく、原因不明の火災……。
  16年間、どのような事故も見逃すことなく、原因究明と再発防止策について、その都度質問をおこない、安全確保につとめて参りました。質問の回数は10回や20回ではなく、数え切れないほどです。
 


脱原発条例を制定

  堀道政時代の2000年、私は与党政策審議会の副会長を務めておりました。そして泊原発3号機の建設議論の中で、「省エネ新エネ条例」いわゆる「脱原発条例」を制定しました。
  その前文で、「原子力は、過渡的エネルギーである」と位置づけ、「脱原発の視点に立って、道内で確保出来る新エネルギーの利用を拡大する」と明記したのです。
  まさに「脱原発」は、北海道にとって、エネルギー政策の基軸に据えられてきたのです。


プルサーマルに明確に反対

  原子力発電を続けると、使用済み燃料の中に、大量のプルトニウムが蓄積されます。プルトニウムは原爆の原料であり、国際原子力機関(IAEA)の監視対象になります。
  自民党政権以来、将来はプルトニウムだけで発電する高速増殖炉(もんじゅ)計画をもっていますが、事故続きで実現の目途すらたっていません。
  かと言って、プルトニウムを貯め続ければ国際的批判にさらされてしまうのです。そこで考えられたのが、既存の原発の中でプルトニウムを処理しようということでした。それがプルサーマル計画です。極めて危険なプルトニウムを扱うことに、専門家の中からも疑問の声があがっています。今回の福島原発災害でも3号機でプルサーマルが実施されてきました。
  私は、泊原発におけるプルサーマル計画に明確に反対の立場を明らかとしました。一昨年は、この問題で、資源エネルギー庁から参考人をエネルギー委員会に呼び、議論しています。私も、2時間にわたり、国の担当者に泊原発におけるプルサーマル計画は思いとどまるべき事を、主張してきました。
  先月30日に開かれた臨時道議会でも、知事は、「福島原発におけるMOX燃料(プルトニウム混合燃料)の問題が今後国において検証される。その結果を踏まえて対処したい」と、プルサーマル計画の見直しともとれる微妙な答弁をしております。

北海道はクリーンエネルギーの宝庫


  原発は、一歩間違えれば人類を破滅に導きかねないことが、今回の福島原発事故で明らかとなりました。
  だからこそ、世界の潮流は脱原発なのです。「脱原発条例」をもつ北海道は、その先頭に立とうではありませんか。
  日本海の海風は風力発電に最適とされています。道北の日照時間の長さも太陽光発電にむいています。広大な酪農地帯から出される家畜糞尿を活用したバイオガス発電も、相当量が期待できます。その他にも、潮力発電、地熱発電、低水位発電など様々なクリーンエネルギーを組み合わせることで、原発に依存しないエネルギー社会は創造可能なのです。
  福島原発災害は、人類に警鐘を鳴らしています。教訓と呼ぶには、あまりにも多くの犠牲を出してしまいました。この悲惨な現実を、私たちは将来にわたって忘れることは出来ません。
  二度と過ちを犯さないため、国は原子力政策を大きく転換すべき時です。
  私、星野高志が「脱原発」を強く主張するゆえんです。


HOSHINOTAKASHI