HOSHINOTAKASHI

第一章 計画編


カーボンゼロ計画
再生可能エネルギー先進国を行く

はじめに

   私たちは道議会民主党会派内に、「チーム25北海道」という政策研究グループをつくり、様々な活動を展開しています。
 その研究テーマは道政全般にわたりますが、グループの名称に象徴されるように、温室効果ガスの25パーセント削減問題がグループ活動の基本となっています。今回は、これまでの様々な活動を踏まえ、再生可能エネルギーの先進国である欧州の二つの国を調査することとなりました。調査団の構成は次の通りです。

 なお、今回の海外調査には加わわりませんが、「チーム25北海道」のメンバーとして札幌市白石区選出の広田まゆみ道議は、テーマ選定や講師打ち合わせなどのアドバイザー的役割を果たしました。

視察団構成メンバー

氏名 役割と任務 選出地
滝口 信喜 団長(元道議会エネルギー委員長) 室蘭市
池本 柳次 副団長(道議会エネルギー委員長) 十勝管内
星野 高志 秘書長(元道議会エネルギー委員長) 札幌東区
佐藤 伸弥 団員(連続公開講座担当) 網走市
梶谷 大志 団員(建設委員会所属・環境都市担当) 札幌清田区
中山 智康 団員(環境、エネルギー両委員会所属) 伊達市
田島 央一 団員(核廃棄物d深地層研究施設担当) 宗谷管内


基本コンセプト

  〈90年比25パーセント削減の可能根拠をさぐる〉

視察地を選定した理由


   私たちは今回、スウェーデンとデンマークの各都市を視察先に選定しました。「なぜそこに行くんですか」「そこで何を勉強してくるのですか」「そのことは道政にどうかかわるのですか」〜このような疑問や指摘に対して、私たちは明確な説明をおこなう責任を負っています。公費による海外事情調査である限り、その費用対効果が厳しく問われるからです。
 訪問国はスウェーデンとデンマークです。デンマークは、再生可能エネルギーの展開において、世界のトップランナーとして知られています。スウェーデンは、従来の都市と比較して、環境負荷を半減する都市作りプロジェクトを10年にわたり進めてきました。それが今年完成します。また同国では、原子力発電所で発生する放射性廃棄物の深地層処分研究が、今年一つの区切りを迎えようとしています。本道の幌延深地層研究施設との関連において、相似点相違点を研修して参ります。
 両国における具体的な調査項目は、事項以降に記す事前研修の各種取り組みから必然的に導き出されたものであります。

事前準備

(1)連続公開講座
 
 @第一回講座
  【開催日】 6月14日(月)10時〜11時
  【報告者】 道庁環境生活部及び経済部の担当課
  【テーマ】 北海道としての温室効果ガス排出削減の
         取り組み

 A第二回講座
  【開催日】 6月17日(月)17時〜18時
  【報告者】 北海道電力株式会社
  【テーマ】 世界の動向を踏まえた温暖化対策と
         原子力発電

 B第三回講座
  【開催日】 7月6日(火)10時〜11時
  【報告者】 北海道環境財団
  【テーマ】  地球温暖化対策、課題と提案
          25%を先導する実効ある政策に向けて

 C第四回講座
  【開催日】 7月6日(火)11時〜12時
  【報告者】 北海道グリーンファンド
  【テーマ】  世界の潮流となった再生可能エネルギー

(2)現地視察
 @第一回視察
  【視察日】 3月
  【視察先】 日本製鋼社室蘭製作所(日鋼室蘭)
  【テーマ】 道内初の風力発電施設の一貫生産

 A第二回視察
  【視察日】 8月2日(月)
  【視察先】 幌延町
  【テーマ】 深地層研究施設の現段階と
         メガソーラーシステム
(3)北海道経済連合会との意見交換
  【開催日】 8月4日(水)8時〜9時
  【テーマ】 道内における具体的取り組み状況ほか


視察日程

2010/8/21(土) ANA○○便 新千歳発
成田泊

8/22(日) 成田発
ストックホルム泊

8/23(月) 午前 ストックホルム市役所
午後 スウェーデン交通局(ポッドカー)
ストックホルム泊

8/24(火) 午前 ハンマビー地区
午後 スウェーデン放射線安全当局
ストックホルム泊

8/25(水) 午前 移動
午後 ウスターブロー地区
コペンハーゲン泊

8/26(木) 午前 欧州環境庁
午後 コペンハーゲン市 市議会
コペンハーゲン泊

8/27(金) 午前 公共交通の実態視察
午後 出国
機中泊

8/28(土) 成田着


具体的視察課題

(1)欧州環境首都に初代認定されたストックホルム市役所訪問(23/AM)
 
 欧州連合(EU)は、2008年に「欧州環境首都」認定制度を設立しました。その結果、2010年(初年度)の「首都」にスウェーデンのストックホルムを指定しています。その理由は、ストックホルムが実行している様々な政策展開があげられます。まず政策の基本として掲げているのが、2050年までに「カーボンフリー(化石燃料からの全面撤退)」を実現することです。
 バイオガス発電を中心とした再生可能エネルギーの導入はよく知られるところです。再生可能エネルギーにより生産された電力の固定価格買い取り制度は、日本でも部分的導入が始まろうとしていますが、先進地区における課題や問題点について担当者に直接伺いたいと思います。
 同時に市民生活においても各種取り組みがおこなわれています。交通機関によるCO2排出量を15%削減した「渋滞課金システム」の導入や、先進的な公共交通政策を中心とした環境政策も見過ごせません。

下記の項目を念頭に何点かに絞って調査して参ります。

@スウェーデンにおける地球温暖化対策の基本を聴取(排出権取引の実態と課題など)

A欧州環境首都について、その概要を聴取

B環境裁判所の機能と役割について聴取

C人口密度が低いことから、地域分散型発電が推測されるが、その実態を聴取

D人口密度の高い都市部と、低い地方の取組の違いや特徴について聴取

E地域熱供給システムの実態を聴取

F再生可能エネルギーの内訳で、バイオマス・廃棄物が突出している理由を聴取

G風力の利用が遅れているが、今後の方針を聴取

H固定価格買い取り制度の内容と問題点(種別ごとに価格差はあるのかなど)を聴取

I渋滞課金システムの制度内容聴取

Jポッドカーをはじめとする公共交通政策聴取

K公用車を含めて、カーシェアリングの実態と制度について聴取

(2)スウェーデン交通局が開発中のポッドカー調査(23/PM)

 本道は都市間の距離が長いという地域特性から、運輸部門のCO2排出が他県を大きく上まわっています。この部門の取り組みは、25%削減のキーポイントの一つになり得ると考えられます。自動車によるCO2排出抑制を目指すスウェーデン交通局は、次世代カーとしてのポッドカーの技術開発を進めていると聞きます。我が国、とりわけ本道における導入の可能性などについて、ストックホルム市役所と意見交換するとともに、その実際を視察調査してきたいと思います。

@ポッドカーの実際を視察

A公共交通政策の展開により、渋滞緩和されたという交通実態の調査

(3)完成したハンマビー臨海地区の検証(24/AM)

 今回の海外調査団「チーム25北海道」のメンバーの内、滝口、池本、星野の三人は2003年に、ハンマビー臨海地区を視察しています。同地区は、2000年から始まった循環型都市づくりプロジェクトです。環境への負荷を従来型都市の半分にすることを目指す各種取り組みは、「カーボンフリー」計画のシンボルとも言えます。2003年当時は、プロジェクトが始まったばかりでした。それが今年完成します。

2003年当時、急ピッチで進められていたニュータウンプロジェクト。左の写真は、前回視察時に写したもの。

 居住する市民と、地区外から働きにくる労働者あわせて3万人規模といわれるプロジェクトを当時と比較し検証してきたいと思います。

環境都市づくりでは、工事手法そのものも環境に配慮されていた。そのあたりも、今回検証してきたい。

 省エネルギーシステム、下水処理、廃棄物処理、良質な水管理などの一貫システムは、「ハンマビーモデル」と称され、日本政府においても着目している点です。
 90年比25%のCO2削減を実現するためには、是非とも調査しておく必要があるプロジェクトと考えています。

@環境都市づくりプロジェクトの概要聴取

A計画期間において明らかとなった課題と問題点聴取

B市民意識の実態聴取

(4)放射線安全当局を訪問、高レベル放射性廃棄物処理計画の調査(24/PM)

 スウェーデンは、原子力発電所から発生した使用済み核燃料を再処理せずに、高レベル廃棄物として地層処分する計画をもっています。2009年6月、国から処理を請け負うSKBという会社がこれまでの調査結果にもとづき、地層処分場の建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定したことを発表。今後、SKB社は環境影響評価及び安全評価書を取りまとめ、それらとともに処分場の立地・建設の申請を2010年末までに行う予定となっています。許可は政府が出すことになっています。この申請に対する法律に基づいた決定が行われると、スウェーデンにおける処分場の建設が正式に決定することとなります。
 これらは深地層研究施設を有する本道にとって、極めて関心の高い情報といえます。決定権をもつ政府当局から、これまでの経過、現段階の課題、今後の展望などの諸事情を直接聴取することを通じて、我が国における高レベル放射性廃棄物の深地層処分に対する見識を深めてきたいと思います。

下記の項目を念頭に何点かに絞って調査して参ります。

@研究の現段階と課題聴取

ASKBから提出される建設申請に対する判断の基準を聴取

B再処理しない理由や背景を聴取

C国民意識の推移を聴取

D原子力発電にかかわる政府としての基本姿勢を聴取

(5)官民の協同によりおこなわれている環境対策の実際を視察(25/PM)

 NGOの活動は、我が国では始まったばかりです。しかしEUにおいては、NGOの活動を抜きにして、再生可能エネルギー問題は語れないと言われています。今回は行政と非政府組織の連携の実際を調査してきたいと考えています。
 行政による政策展開と市民活動家による実践というように、とかく線を引きがちな我が国との比較において、関係者と直接意見交換をすることにより見識を深めてきたいと思います。

@官民協同の基本的考え方を聴取

A現段階で抱えている課題を聴取

B将来に向けた取り組み方針を聴取

(6)欧州(EU)環境庁訪問と意見交換(26/AM)

 アメリカや我が国では今、スマートグリッドシステムの開発が進められています。地域内に通信(電力)網を巡らすシステムです。個別家庭のコンセントから地域発電所までをネットワークします。例えば電気自動車を家庭のコンセントにつないでおけば、通常は充電ですが、夜間など他の場所で電力が必要になった場合、その車が電力供給施設の代わりをします。電力の需給が自動的にコントロールされるシステムです。
 欧州では、これをさらにすすめ、スーパーグリッドシステムが開発されつつあると聞きます。地域のネットワークにとどまることなく、EUを構成する国と国をネットワークしようというものです。こうした発想こそが「カーボンフリー(化石燃料からの全面撤退)」という構想を支えているのでしょう。
 スーパーグリッドシステムをはじめ、世界の再生可能エネルギー政策を先導するEUの環境政策に直接触れる機会は、そう多くありません。
 私たちは今回、欧州(EU)環境庁とのコンタクトに成功しました。もちろん制度も地域特性も違う国同士ですから、欧州の環境政策を直接日本に持ち込むことは不可能でしょう。だが、そこに我が国が目指す25%削減のヒントがあることは間違いありません。スウェーデンやデンマークにおける再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の実態は、それぞれの市役所などでもヒアリングできるでしょうが、欧州全体の実態については、欧州環境庁でしか調査することができません。

@EUを構成する各国の取り組み現状を聴取

A固定価格買い取り制度に対する各国の考え方を聴取

Bスーパーグリッドシステムの概要を聴取

CUとしての地球温暖化対策の基本を聴取


(7)コペンハーゲン市議会訪問とヒアリング(26/PM)

 デンマークにある風力発電機を真っ白い紙の上にプロットすると、国土の形が浮かび上がると言われています。地上ではもう建設する場所も限られており、今後は洋上への進出の時代になるというわけです。
 我が国では、低周波問題や、落雷、渡り鳥被害などマイナス面も指摘される風力発電ですが、世界の潮流は今確実に風力発電に向かっています。
 風力発電のシンボリックな存在であるデンマークの首都コペンハーゲン市議会から得られる情報は限りないと考えています。
 例えば、「カーボン・ゼロ」どころか、「カーボン・マイナス(島内の電力をすべて再生可能エネルギーとしただけでなく、余剰電力を他の地域へ送電している)」を実現したデンマークの小島における自然エネルギー政策などは極めて興味深いものがあります。

下記の項目を念頭に何点かに絞って調査して参ります。

@デンマークにおける地球温暖化対策の基本を聴取

A地方都市が風力発電機を設置した場合、税制上の優遇措置などの有無について聴取

B原子力発電を選択していない理由と背景を聴取

Cエネルギー強度(※)はEU中、もっとも低いが、省エネの特徴的な取り組みを聴取

D省エネ促進において、事業者(CO2排出者)の考え方をどう反映したかを聴取

Eカーボンマイナスを実現した○○島の取り組み概要を聴取

※国内のエネルギー総消費量をGDPで除したものであり、経済のエネルギー効率を表す

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