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敷地面積51万坪、なんと東京ドーム38個分の広さを持つ熊本工場は、本田技研が全国に展開している工場の中で、最大だ。実際にオートバイをつくっているラインも、気が遠くなるほど長い。従業員も正社員、派遣労働者、パート職員を含めて、約3千8百人にのぼる。エンジンや本体はここでつくられるが、小さな部品はそのほとんどが協力メーカーから納品されている。その末端まで勘定にいれると、いったい何人の雇用につながっているのか、大変なものである。 |
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建物に入ると、いきなり機械油のにおいが鼻につく。しかし工場は極めて清潔だ。真っ白な作業服にも創業者の理念が反映されているという。つまり、「自動車やバイクは人の命にもかかわる製品だ。人の命を扱う職業は例えば医師がそうであるように白衣を着ている。だからホンダの工場社員の服は白にする」ということらしい。 |
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工場内は写真撮影が禁止されている。撮れるのはここまで。玄関ホールには、ホンダの製品が展示されている。上下の写真は、隠し撮りしたものではなく、パンフレットからスキャンしたものなので、念のため。
写真は、経済部総務課主任の生田裕さん。随行員の中では一番若く、テキパキと調査活動をサポートしてくれた。 |
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見ているうちに、次々とバイクが組み立てられていく。その光景は、一種の感動を与えると同時に、ものづくり産業の威力を見せ付けられる思いだ。塗装からプレスなど、コンピュータ制御された機械(ロボット)が次々と製品をつくりだしているが、やはり最後の微妙な工程は熟練した人間の手によらなければならないことも見て取れる。 |
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会社は自らの事業展開をするだけでなく、地域との連携にも力を入れる。広大な敷地を地域イベントに解放したり、子どもたちにものづくりの楽しさを知ってもらういくつもの企画を実施しているのだ。将来の人材育成にも役立っているに違いない。 |
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右は経済部の総務課長・尾山一夫さん。左は企業局発電課主幹の岡泰広さん。
課長は企業誘致に意欲があり、熱心にメモをとったりしていた。岡さんも、仕事柄あとで出てくるコージェネシステムに強い関心を示していた。 |
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作業工程などの改善提案を社員が競い合う仕組みもある。現場を知る人の提案こそ具体的だし、安全性の向上にもつながる。採用された提案には、いくつもの賞も与えられ、職場環境改善に社員の意欲もわく。
なぜここに4日間運転をしてくれた熊本バスの運転手・藤川さんと、ガイドの氏家さんが登場するかというと。偶然にも、ガイドさんのご主人が工場で働いていて、社長賞を受けたとして写真入で紹介されていたからだ。 |
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左から、経済部総務課主査の安田仁文さん、労働委員会総務課主幹の山石祐次さん。その右の生田さんはさきほど紹介した。
山石さんは、釧路の橋本道議が労働環境に関する質問などをしているときも、忙しくメモをとる。安田さんも、それぞれの訪問先で、議員が相手とやりとりをしている間を縫うように、各種質疑をしていた。議員だけでなく、随行道職員も成果を道行政の中に生かしていただきたいものだ。 |
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ここの工場では、オートバイや汎用エンジンをつくっているだけではない。家庭用のコージェネシステムも制作している。つまり、都市ガスを使ってタービンを回し、発電をする装置である。もちろん熱も回収されるから、極めてエネルギー効率のよいシステムだ。
病院やホテルなどに導入されているケースはよく見るが、まさか家庭用が出回っているのは知らなかった。値段を聞いてみた。直接販売をするのではなく、東京ガスや大阪ガスに卸しているため、定価はわからないが、100万円前後ではないかとのこと。量産されることによるコスト低下を強く期待したい製品の一つに出会った。 |
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技術の本多技研と言われるが、機械化が進む中で、しかし同時に人間の力を信じたものづくりを進めている現場に立ち会った印象を持ちつつ、会社を後にした。 |
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素晴らしい経営者にお会いできた。アイシン九州(株)の加藤肇社長だ。1993年、県の企業誘致に応じるかたちで、事業をスタートした。
熊本県立農業大学の跡地に立地。校舎の一部を活用して95名で会社を設立したのである。トヨタグループの中核企業であるアイシン精機の子会社として産声をあげた。
だがチャレンジ精神旺盛な加藤社長は、親会社からの受注だけに満足する人ではない。ものづくり企業は、「設計」「製作」「販売」の三段階からなるが、子会社として生きていくだけなら、製作に専念していればいいわけだが、それでは発展性がないというのが、社長の信念だった。 |
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愛知の本社に製品を納めるだけではなく、九州の自動車会社に部品を販売するという信念は貫かれる。親会社であるアイシン精機を経由しないで直接取引をする会社は九州を中心に20社となった。しかも従業員は、06年12月現在で、設立時の10倍、950名となったのである。
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社長がバイタリティいっぱいだから、社員も負けていない。右は営業本部営業調達部長の小田浩一郎さん。左は自動車車体系商品事業部製造部長の緒方史朗さん。
主として、お二人に工場内を案内していただいたが、成長企業は、やはり人材に支えられていることを実感した。 |
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こちらは取締役で、電器・電子事業部長の池田哲夫さん。あとの方の写真に出てくるが、組み立て産業としては通じるものがあるにしても全く異質の液晶・半導体装置製作部門を立ち上げた。どんどん発想する加藤社長と、それを具体化する池田さんのような方がいるから、事業は拡大していくのだ。 |
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ドアフレームの溶接箇所を研磨した後の滑らかさを実際に示しながら、技術の確かさを説明してくれる緒方さん。研磨前の写真をお見せできないのが残念だが、その違いは歴然としている。溶接したことさえわからない仕上がりだ。
実はこの工程、極めて難易度の高い作業ということもあるが、社員の間ではいわゆる3K部門として嫌われていた。
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ところが、仕事にポイント制度を導入し、ある工程を「一人でできる。段取りができる。トラブルに対処できる」などのチェックをクリアーした場合、数値で仕事が評価されるようになった。難易度の高い研磨工程は出来るようになると高ポイントを獲得できる。会社には正社員の他に期間社員もいるが、集めたポイントによって昇任するしくみになっている。
期間社員が、正社員、主任、職長、係長となっていったケースもある。頑張った分だけ報われるという社長の信念は、ここにも見られた。 |
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ユニークな取り組みが、「現調化推進展示場」だ。アイシン九州が製作したり、愛知から持ち込まれる部品を展示している。一つひとつには荷札のようなものがついていて、そこに材質やその他の仕様、さらには発注金額まで記されている。
地元の製造業者がここにきて、「あ、これなら俺でもできる」とか、「少しスキルアップして挑戦しようか」などと品定めをしていくわけだ。
地元業者との連携、共存をめざしているアイシン九州ならではの取り組みだろう。写真は、部門責任者として説明する小田部長。私の左は留萌の石塚道議、右は空知の稲津道議。 |
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しかも、ただ会社を大きくしただけではない。誘致企業だが、いやそうだからこそ地域密着をめざした。広大な敷地につくられたグラウンドは土日には無料開放。もうずっと先まで予約が入っている。そして会社にはフェンスがない。閉鎖的な印象を与えないためである。起業家精神溢れる加藤社長が、今度は何をはじめるのか楽しみだ。 |
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アイシン九州の冒頭で説明した、新分野の液晶・半導体装置製作工場。自動車部門とは打って変わって静寂さに包まれている。
九州はトヨタ、日産、ダイハツなどの自動車工場が集中しているカーアイランドであると同時に、ハイテクアイランドでもある。そこに着目した加藤社長の発想と、担当する池田取締役の手腕がなせる技だろう。 |
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