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環境生活委員会道内視察  2003.6/23-25

北海道の雄大な自然環境は、
誰もが知るところ。
知床の自然は今、
世界遺産にも登録されようとしている。
その、保全の取り組みや
計画について、
井上真澄委員長をはじめとして
視察をしてきた。

写真の圧縮加工をしていないため、
高速回線以外の方は、
ご覧になるのに、時間がかかると思います。
ご了承下さい。


流氷がもたらす、自然の恵み     2003/6/23 紋別市

いよいよ丘球空港より、出発。YS11にかわって就航しているダッシュエイト。
この日は、ほぼ満席だったが、いつもは厳しい運営が続いており、路線運休の動きもあるようだ。

ターミナルビルの配慮で、視察専用待合室で搭乗をまった。
犯罪防止のため、一人ひとり厳しいチェックを受ける。
「俺、悪者じゃないよ」と、加藤礼一道議。

紋別空港で出迎えてくれた、環境生活委員長の井上真澄道議と。彼は、今回の視察の代表だ。

まず訪れたのが、紋別山(通称・大山)の山頂に市がつくったスカイタワー。NHKをはじめ、民放各社のテレビ塔が林立していたが、機能上および景観上からタワーのアンテナに一本化した。しかし写真のように、すでに使われていない古いアンテナが残っている。市民からは、撤去の要望も強い。

北大、海保などのレーダー塔はもある。こちらは今も現役。気象情報や流氷観測に活躍している。海に隣接する334メートルの大山は、昔から市民生活の快適と安全を守ってきた。

網走管内は、287キロメートルに及ぶ海岸がつづき、ほぼ新潟県と同じ面積をもっている。道立公園の設置も予定されており、保全すべき自然環境の豊富な地域だ。
流氷も重要な観光資源だが、テロ問題や、新型肺炎の影響で観光産業全体が落ち込んでいるのが、きがかりである。写真は原田裕道議。

森林浴がもたらす効果に、市はいち早く注目。昭和29年、市制移行と同時に、スカイタワーの立地場所を含む大山頂上を、園地として国から買い取った。
それまでは国有林だったわけだが、買取価格が、年間市予算の実に2割だったというから驚く。
視察団紅一点の須田靖子道議。中央は、帰来議事課主査。

写真は、市内にあるトッカリセンター。トッカリとは、あざらしのこと。魚網にひっかかったり、岩に衝突して怪我をしたあざらしを治療する場所だ。

同センターは、昭和62年に紋別市が、親水緑地として設立。あざらしだけを飼育する施設は国内でも有数のものだ。
事故で負傷した鳥獣を傷病鳥獣という。これまであざらしは保護法における対象からはずされていたが、「ごまちゃん」効果か、今年からあざらしも対象となった。
それにともない予算もつくこととなる。今後、獣医師会、市、道などのネットワーク充実が求められている。

流氷観光として知られるガリンコ号。初期のものがトッカリセンターに展示されている。もちろん、同船は観光用に開発されたものではなく、氷上航行における実験船だ。
トッカリセンターで保護され、治療の終わったあざらしはガリンコで、沖合いまでつれていき、そこで海にかえすこととなる。
自然と人間の共存のためには、多くの知恵と努力がはらわれているわけだ。
中央は、蛯名清悦道議。

右の写真は、沖合い1キロに建設された氷海展望塔、オホーツクタワー。観光のスポットとなっているが、実はこの施設、国のアクアマリン計画にそってつくられた観測ステーションである。

岸辺から施設までは、電気自動車が運行している。これは札幌の豊平峡ダムで使用されていたもの。
堤防上への自動車乗り入れに法的規制がかかっているなか、環境にもやさしい輸送手段として導入された。

施設の目的と概要について、紋別市流氷都市推進室産事の濱岡荘司さんから説明を受ける。
オホーツクの海洋、気象の動きを分析・予測することは、船舶の安全航行に欠かせない。

施設の地下は、海底にある。小さな窓からはオホーツク海の中が見える。人間が魚を見ているのか、それとも逆か。一匹のガヤが私たちを見送ってくれた。

流氷科学センター     2003/6/24 @ 紋別市

道立オホーツク流氷科学センターを見てきた。地球上で氷の南限は北緯45度。氷縁海(氷のふち)の研究は、地球規模で進む温暖化現象を分析するのに欠かせない。流氷が接岸する沿岸で、都市があり、飛行場もあるという研究に適した場所は、世界中でここしかない。
写真の左は、小畑保則道議。

今年は15年ぶりに、高さ7メートル延長4キロの「氷の山脈」ができた。本物の流氷の隣にいるのは、岩本剛人道議。

北大の研究施設が、来年の国立大学独立行政法人化に伴い、撤退する動きになっているようだ。奇妙な話である。
日本規模での研究拠点をつくりあげ、世界の科学者を誘致する、そんなダイナミックな構想の必要性を強く感じる。
今度の議会でもとりあげたい。

このセンターの設置目的は、海洋(流氷)科学を一般の人々にわかりやすく理解してもらおうというもの。
興味をもたせようと、様々な工夫がみられる。写真はオホーツクの魚を氷づけにしたもの。

昨年からは、元北大低温研付属流氷研究施設長の青田昌秋さんを所長に迎えた。北大名誉教授の彼は、流氷科学における日本の第一人者だ。
右側が青田氏。

ワッカ原生花園     2003/6/24 A 常呂町

北海道遺産に選ばれたワッカ原生花園は、オホーツク海とサロマ湖に挟まれて広がっている。国道から少し距離があるため、一般の観光ルートからははずれている。その分、自然度が高いものとして残ってきたのだろう。
だが昭和53年、道路が舗装されると事情は一変した。

観光客が激増したのである。街の経済には寄与したが、皮肉なことに観光客の増加は、観光資源である自然そのものの破壊にもつながったのである。
街をあげた環境保全策がとられた。密漁防止のための人員配置と、自動車の乗り入れ全面禁止である。これが功を奏して花の種類も300種類を超え、みごとな復元を果たした。
写真は、ネイチャーセンターのレンタル自転車にのる小野寺秀道議。

雑草駆除のため試験的に実施した、農協青年部による羊の放牧や、地元高校生のヨモギ抜き取りなど、行政と地域が一体となった取組みが、平成13年の北海道遺産指定に結びついた。

広域ゴミ処理施設     2003/6/24 B 北見市

北見市はこれまで、ゴミは焼却せずに埋め立ててきた。市民生活の多様化と、それに伴い増えつづけるゴミに対応するため、市は平成13年からリサイクル型ゴミ焼却施設を稼動させている。
建設途中に、北海道の広域ゴミ処理計画が。隣接4町のゴミも処理することとなった。
しかし炉を大型化するのではなく、ゴミの減量化によって対応することとしている。

廃熱を活用した自家発電も。施設内の5〜6割の電力をまかなっている。
焼却しおわった灰の中にはダイオキシンをはじめ、重金属が含まれる。同施設は、プラズマ溶融することで、毒性物質を閉じ込めてしまうとしいる。

残念ながら、燃えカスの中には、写真のような大型鉄製ゴミも含まれている。例えば、スノーヘルパーを燃えるゴミの日に出す市民もいるわけだ。
ゴミ問題は、行政だけでなく市民といったいにならないと、解決できない。施設内に、市民アピールするために展示されている。

大型ゴミの中には、まだまだ使える立派なものがたくさん含まれている。これらを展示し、市民に無料で提供している。抽選になるなど、人気が高い。

知床自然センター     2003/6/25 斜里町

知床が、世界遺産として登録されようとしている。世界遺産の条件は、景観がすばらしいというだけではない。知床の場合、流氷がくる海、太古の自然を残す森、鮭が回帰する河川、これらが連続していることから、世界有数の自然生態系が出来上がっているのである。
写真右は、昨夜から合流した松岡室長。

あちこちにいた北キツネは、最近見られない。彼らの間に皮膚病が流行し、数が激減したようである。10年サイクルほどで、増えたり減ったり、これも自然のコントロールとしてそのまま受け入れている。
ただし鹿の植害には困っている。木の芽を次々と食べてしまうのである。全道的に鹿が増えているのは、自然の摂理ではなく、昔、鹿の天敵オオカミを人間が絶滅させたことにもよるようだ。

人間と自然のかかわりかたの難しさを見せられた。

知床にもかつて何度か、開拓の鍬が入った。しかし厳しい自然環境に耐え切れず撤退。開拓と撤退の繰り返しによる離農跡地が860haに及んだ。町が1972年からはじめた「100平方メートル運動」は、国民の大きな共感を呼んだ。100平方メートルを8千円で買い、町に寄付しようという、ナショナル・トラスト運動である。
%が町有地となり、山づくりりが進められている。
写真は、石川総務課長。

登録のために、町をあげて頑張っている。斜里町助役は、「登録そのものが目的ではない。知床のもつ普遍的な価値を将来にわたってしっかりと保全していくこそが、本当の目的」と言い切る。こうした姿勢は、地域住民の高い環境意識に支えられている。

東北にある白神山地が世界遺産に登録されたとき、観光客は3倍になったという。大きな経済効果は期待できる反面、環境破壊につながりかねないという課題もかかえる。十分な管理計画を立てる必要があるだろう。