HOSHINOTAKASHI

エネルギー委員会道内視察 2007/8/28〜30

議会のエネルギー委員会で
道内の廃棄物発電や自動車リサイクルなど
先進的な取り組みをおこなっている
現地を視察してきた。



バイオエタノールの原料になる菜種畑

参加委員
氏名 会派 選挙区 その他
岡田 篤 民主 釧路支庁 委員長
藤沢澄雄 自民 日高支庁 副委員長
稲村久男 民主 空知支庁
道見重信 自民 札幌北区
橋本豊行 民主 釧路市
東 国幹 自民 旭川市
金岩武吉 フロンティア 日高支庁
田村龍治 民主 胆振支庁
戸田芳美 公明 釧路市
村田憲俊 自民 後志支庁
星野高志 民主 札幌東区
板谷 實 自民 苫小牧市
随行道職員
氏名 役職
嶋崎卓夫 経済部資源エネルギー課長
水上正一 経済部資源エネルギー課参事
池本浩暁 経済部資源エネルギー課主査
栗林 覚 経済部資源エネルギー課主任
辻 堅也 道議会事務局議事課主査

十勝更別村(さらべつむら)・帯広市………8月28日
久しぶりの帯広。気温もかなり高い。改選後はじめての委員会メンバーによる道内視察だ。
現地でしか体験出来ないものを、しっかり見てきたい。

帯広駅から最初の視察場所までのバスの中。視察団を迎えてくれた、岡本十勝支庁長。今年6月に赴任したばかりだ。
「温暖化防止に取り組む市民の関心が高い中、エネルギー委員会が当地を訪れてくれたことは、地元の人たちの励みになる」と話されていた。
最初の訪問先である更別起業について事前説明をする十勝支庁産業振興部長の長橋さん。こうした予備知識が視察の成果を高める
三日間、私たちの足となってくれた阿寒バス。
BDF製造施設
(有)更別起業
更別村字更別南1線96-57

Tel.0155-21-0001

昭和61年度設立/平成元年法人化。
平成16年度機械メーカーからBDFの支給を受け、自社車両でテスト実施、及び廃食油の市場調査。
平成17年度D-oil精製実演のPR実施。寒冷地での精製方法を確立。
社長の為広正彦さん自らが、廃食油からつくったBDF(バイオディーゼル燃料)を持ちながら説明をしてくれた。
公共事業が減る中で、建設業のソフトランディング(新分野への事業展開)が求められている。自らの経験と環境問題という社会的ニーズに沿ったBDF製造に、大きな情熱を燃やしている。
事業の課題は三つ。
@廃食油の収集、A品質の維持、B生み出される老廃物の適切な処理だ。

会員施設(侵食店など)に設置したタンクからバキュームカーで定期的に油を回収する。
設備そのものはそれほど大きなものではない。意欲と実行力があれば環境ビジネスは成立する。
BDFは間違いなくこれから各地で普及していくだろう。ただし軽油に違法混合するなどの不正も散見される。
地球環境を一人ひとりが守っていくという良識が求められる。ここでは廃油の回収やBDF購入などは会員制度をとっており、お互いにさまざまなルールを決めながら、地域貢献を目指している。
廃油だけではなく、菜種油は高品質のBDFを可能にする。菜種畑は景観上もすばらしいものがあり、国としても支援の仕組みをつくるべだろう。
廃棄物発電
くりりんセンター
(十勝環境複合事務組合)
帯広市西24条北4丁目1−5
Tel.0155-37-3550

廃棄物を活用した発電について、施設の実際や状況を視察。

平成8年共用開始。廃棄物の適正処理と、ごみ減量にかかわるリサイクル事業を実施。
発電施設
蒸気発電 出力7000KW
ガスタービン発電 出力1600
ゴミの減量化はどこの地方でも大きな課題だ。不燃ゴミのリサイクルを実施すると共に、燃焼熱を利用して発電をしている。

様々な特許を取得しているが、第三セクターのため、それを無料提供することを通じて起業家を応援している。
施設のロビーには自動演奏するピアノがあった。
これはゴミとして捨てられていたものをリペアしたもの。「物の大切さを子どもたちにもわかって欲しい気持ちから、リサイクルのシンボルとして展示しているのです」と説明してくれた。
中央制御室では、炉内のゴミ燃焼を24時間監視している。
下から二番目は「売電電力量」を示し、最後は「買電電力」を示している。少し見づらいが、買電はゼロを示している。つまり施設内の電力をまかなった上で、北電に余剰電力を売っていることがわかる。
どこのゴミ焼却場でも見られるピット。ここに収集車がやってきて、ゴミを投げ込む。特徴的なのは、個人の家庭ゴミ持ち込みも認めていることだ。

持ち込みOKだとゴミの総量が増えそうだが、10キロ160円と有料のため、むしろ減量化が進んでいる。
バイオエタノール製造施設
十勝産業振興センター
((財)十勝圏振興機構)
帯広市西22条北2丁目23−9
Tel.0155-38-8850

小麦粉を利用したバイオエタノールの製造について、施設などを視察。

十勝圏のものづくり産業を支援する拠点として、平成18年4月に設立。農林水産省のバイオリサイクル研究事業の一環で、エタノール抽出実験用発酵槽を設置し、実証研究を実施している。
「作っても作っても足らない農業、絞っても絞っても足らない酪農、私たちはそれをめざしている」挨拶にたった理事長は力説した。最近は「食料が足らないのに、ビートなどを燃料にするのはおかしい」という指摘もある。それに対する反論だ。
輪作体系を維持するためには需要を超えるビート生産も欠かせない。そのビートや規格外小麦を原料としてバイオエタノールを製造している。
農業生産と燃料生産は矛盾しないという持論に、北大元学長の丹野さんもうなずくという。
品質を高めるためにさまざまな実験が繰り返された。
原理は簡単だ。ビートや規格外小麦に酵母をいれて発酵させる。飲酒用ではないので、香りや辛さなどは関係ない。

できあがったバイオエタノールの純度を、水分を取り除くことであげていくのだ。
できあがったバイオエタノールの臭いをかぐ視察団。アルコールの臭いそのものだ。
道内の道内の小麦は主に麺の原料となっている。バイオエタノールの原料とされるのは規格外小麦だ。写真では分かりづらいが、実際には肉眼ではっきりその違いがわかる。

橋本道議の右手にあるのが食用小麦で、左手で持つ方が規格外として燃料に返信する小麦だ。
私が手に持っているのは、3パーセントのバイオエタノールを混入したガソリン(ガソリンは危険防止のために着色されている)。

E3とかE10とか、よく言われるがこれはバイオエタノールの入っている率だ。スウェーデンなどではE85が実際に使われている。

エンジンの仕様を変更することで、日本においても2030年にはE10を可能にすると言われている。地球温暖化のスピードを考えると、可能な限りの前倒しが必要だろう。


釧路市………8月29日
視察2日目。バスの中で概要を説明する釧路市長の前川部長。炭鉱閉山後の釧路は、官民で地域活性化に向けて多くの努力がなされている。
昼食に出た鹿肉、鯨肉を使ったどんぶり。946円。ダチョウの刺身は800円。評価はさまざまだった。
ダチョウ・エゾシカ飼育・処理等
(有)阿寒オーストリッチ
地域資源活用センター
釧路市阿寒町布伏内工業団地内
Tel.0154-69-3000

「産炭地基金」を活用して、新たな事業(ダチョウの飼育・製品販売、エゾシカの解体・製品販売など)を実施している企業の状況を視察。
後で出てくる自動車リサイクル事業とならんで、産炭地振興という観点から設立された新事業。建設業のソフトランディングとして、関係者が事業の可能性について検討を加えてきた結果設立された。

飼育と解体を事業として展開しているのは、山形、岐阜に続いて三カ所目である。
道内のダチョウ農家から依託されて解体をしているが、独自に飼育も。写真は肉用ではなく、卵を産むために飼育されている親のダチョウ。かなり大きい。
ちょうど解体作業が始まったところだった。見た目は鶏の解体と似ているが、大きい分、作業も大がかりだ。鹿肉の販売とならんで、地域活性化の一つとして期待が寄せられている。
ここでも、安全管理は重要なポイントだ。施設内に入る前に、足裏を消毒する。
ダチョウの肉は脂肪分と肉の部分がはっきりと分離しているという特徴がある。皮のすぐしたの皮下脂肪をとりのぞいてしまえば、脂分はなくなってしまう。

健康食としても、注目を集めそうだ。
皮も大切な資源だ。着色をされ高級品として生まれ変わる。加工産業として定着すれば、高い付加価値が約束されるだろう。
真ん中の黄色い製品は、道内のパークゴルフ場から依頼され作成したもの。スコアカードホルダー。かなり高価なものだろうが、試作品として様々なことが試みられている。
バイオガスプラント
(有)仁成ファーム
釧路市新野129
Tel.0154-60-8172

家畜糞尿を活用したバイオガス発電の事業内容及び、施設について視察。

平成13年3月稼動。電力は牛舎などの施設内利用が主。平成19年、第2牧場にプラント建設。
北海道の広大な酪農地帯から出る家畜糞尿は、放置すれば環境破壊につながってしまう。しかしこれは同時にエネルギーの宝庫ともいえるものだ。

ヨーロッパなどではかなり実用化されているが、道内でも様々な取り組みが始まった。その実際を見てきた。

写真は右は、議会事務局として視察に同行した辻主査。
北海道の酪農を象徴する乳牛。食の安全が大きな関心を集める中、昔のイメージとは大分違って、清潔な環境の中で飼育されいてる。
ひしめく乳牛たちが、直径数十メートルのサークル状になった施設で整然と搾乳を受けている。
サークルはゆっくりと回転しており、一周すると自ら牛舎に帰っていく。なかなか見事なつくりだ。
搾乳のための装置をはじめ、空調など、施設規模が大きいだけにけっこうな電力を消費している。

その電力を牛の糞尿をエネルギーとしてつくる発想は、理にかなっている。
奥に見えるのが発酵施設。牛舎から地下に埋設されたパイプを通り運び込まれた糞尿は40度に温度管理されメタン発酵される。そのメタンを補足して、脱硫した後、発電機に送られ電気が作られる。
ドイツ製のガス発電機。それほど大型ではないが、一時間あたり100キロワットの電力が生み出され、施設内で消費されている。
視察団に説明をするファームの菊池利治専務。まだ若いが意欲的な経営者だ。

施設全体で2億5千万円かかっているが、国の補助が50パーセント入っている。意外なのは、経産省のエネルギー関連予算ではなく、あくまでも農水省の補助ということだ。

もう少し詳しく経緯を調べてみたい。
自動車リサイクル
釧路オートリサイクル(株)
釧路市新野24番地1084
Tel.0154-57-3718

「産炭地基金」を活用して、新たな事業(自動車リサイクル)を実施している企業の状況を視察。

釧路市は平成14年に「釧路産業クラスター創造研究会」のもとで、官民一体となって事業化の可能性を検討してきた。平成16年5月、釧路コールマイン(株)などの出資で同社を設立。
太平洋炭鉱が閉山になったあと、地域の雇用を創り出すための新産業を起こすために、様々な努力が払われた。
既存の解体業を圧迫することなく、自動車リサイクルを展開している当社は順調に実績をあげつつある。

現場視察の前に、概要の説明を受ける視察団。
自動車リサイクル法が施行されてから、車のリサイクル率は急速にあがった。
解体にあたり、はじめにエアーバックが処理される。電気コードを使って、遠隔でバックを開くのだが、すさまじい音がする。

写真はエアーバックの圧力でフロントガラスにヒビが入ったところ。初めて見る光景に、全員息を飲む。
パーツはひとつづつ手作業ではずされていく。まだまだ使える部品は山のように出てくる。丁寧に洗浄していくと、新品とはいかなくても、それに近い形でリユースの出番を待つこととなる。
当社だけで1万点を超える部品が確保されている。全国の同業者でつくるネットワークにより、欲しいものはだいたい手に入ることとなる。最近では個人からの問い合わせや購入も増えてきた。

およそ150万点のパーツがコンピュータで在庫管理されている。
キャップ型のヘルメットをかぶり、実際に車が解体されていく工程を視察するメンバー。エンジンや座席がはずされ、製鉄所に回される鉄の固まりになるまで、なんと20分ほどしかかからない。

熟練した技術と、吉川方式と呼ばれるライン解体の結果だ。吉川工業という自動車リサイクル会社は北九州にあり、以前環境生活委員会でその実際を見てきたことがある。「こうした工場が北海道にもできたらなぁ」と当時思ったが、それが釧路の地で実践されていたわけだ。


釧路市………8月30日
採炭、炭鉱技術海外移転
釧路コールマイン(株)
釧路市興津5丁目2−23
Tel.0154-46-3112

釧路における稼行炭鉱ならびに、技術移転事業の状況の紹介を受け、採炭現場を視察。

平成13年12月設立。平成14年4月に採炭事業を開始するとともに、海外研修生の受け入れ開始。
採炭事業、生産規模約70万トン。平成19年度からは50万トン体制に移行。
太平洋炭鉱の閉山後、採炭技術を海外に移転することを主な目的にして、コールマインという会社が設立された。
平成13年から5年間、中国やベトナムなどから研修生を受け入れると共に、「研修には生きた炭鉱が必要」ということから、年間70万トンの石炭も採掘している。
中島社長から、5カ年計画で進められた「炭鉱技術海外移転事業」は計画通り成果をあげたこと、今年度からは新しい計画に基づき、向こう5年間で250万トンの採掘を目指すことなどが報告された。

ただしその後のあり方は決定されておらず、雇用問題など再び深刻な課題が浮上することも考えられる。国と道の責任は大きい。
実際に構内に入るため、視察団は全員が作業服に着替える。めったに出来ない体験に、胸が高まる。
炭鉱事業にとって、何よりも優先されることは従事者の安全だ。入坑前のチェックも怠りなくおこなわれる。

腰にぶらさげているのはヘルメットに取り付ける照明用のバッテリーと、一酸化炭素中毒を防止するための器具。けっこう重たいものだ。
この後、「人車(じんしゃ)」と呼ばれるトロッコに乗って海底300メートルまで進んだ。炭鉱には事故防止のため、いくつものルールがある。坑内に持って行かなくてはならないもの、持って行ってはいけないものなども厳密である。

引火を防ぐためにデジカメも持ち込み禁止になっているため、残念ながら坑内の様子をお知らせすることは出来ない。
戦後日本の復興を支えてきたのは、間違いなく炭坑マンである。大陸からの引き揚げ者の雇用の場となり、急速な工業化をエネルギー面で担ってきたのだ。
海外炭に依拠するという国の政策転換で全国の炭鉱は閉山を余儀なくされた。国を支えてきた旧産炭地は今、雇用不安と地域疲弊という大きな課題を抱えている。
道議会エネルギー委員会のメンバーは、空知や釧路など旧産炭地選出の議員が多い。地域の期待を背負っているわけだ。

右の写真は釧路空港に出来た、丹頂のモニュメント。
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