エネルギー委員会道外調査 2008/5/27〜29 HOSHINOTAKASHI


  「水と緑の生まれる街」として最近全国から注目を集めている真庭(まにわ)市をはじめ、新エネ省エネの最新事情を視察してきた。

  取り急ぎ、ご報告したい。写真は京丹後市で研究が進められている食品系廃棄物発電施設内にて。



バイオマスタウン真庭(岡山県真庭市)………5月27日(火)




  視察は、空港での弁当から始まった。岡山空港に向かう途中、羽田での乗り継ぎ時間をつかって昼食をとる田村議員。
  エネルギー問題を調査にいくためにも、まずは体にエネルギーを蓄えておかなくてはならない。

  岡山空港に到着した視察団。随行した議会事務局の安彦主査が、テキパキと仕事をする。
  左は東道議、右は板谷道議、中央は日下道議だ。

  岡山空港を出ると、いきなり生い茂る緑が目に入る。しかしここでも深刻な温暖化が進んでいるのだ。
  最初の調査場所は岡山県真庭市。同市は千メートルを超える山々が連なり、山岳地帯と南部の平地が混在する、林業にとっては最適な地域だ。

  だが林業が抱える課題は、他の地域と同様山積をしている。国内の木材市場は海外材に押され低迷しが続いており、植林の費用も生み出せない状況だ。加えて台風によって大きな風倒木被害も発生。
  こうした中で、「バイオマスタウン真庭」構想ははじまる。地域には三つの高速道路が交叉しているが、単なる通過地点としてどんどん寂れていくことを懸念した若手経営者たちが立ち上がり、木質資源を活用した産業クラスター構想をつくったのである。そこに行政が後からサポートするという全国的にも珍しい形で街おこしはスタートした。大量に生み出される木質副産物を利用した産業群をつくりあげ、資源の循環系を創り出す取組だ。

  会議室で、市の小山主任から説明を受けるに当たり、視察目的などを含めて挨拶する岡田委員長。その向こうには藤沢副委員長も見える。
  バイオマスの利活用対象は、木質系廃材、畜産排泄物、食品系廃棄物などだ。台風により14億円の被害が出た。三代かかってつくった山をそのままには出来ないという共通意識も芽生えた。地域内での資源循環を目指し、人口減少に歯止めをかけて将来にわたり地域を守るという意気込みをみなが持っている。昔の伝統的な暮らしの現代版も視野に入れているという。

  環境保全という目的は当然として、バイオマスで全国的に有名になろうという意図も構想が成功する秘訣だった。昨年にはバイオマスを観光資源として活用する試みとして、産業観光「バイオマスツアー真庭」も始める。空港とJR駅に送迎バスを出し、観光連盟のスタッフがバスの中でビデオなども使いながら様々な説明をする。今回も観光スタッフの真柴幸子さんが同行。街が抱える悩みや、それを乗り越えようという取組を披露してくれた。温泉街もかかえているが、「環境に優しい温泉街」としての位置づけも素晴らしい。
  カメラを構えているのは、戸田道議。

 これまで木くずは、製材所の燃料として燃やされていた。しかしこれらを粉砕、圧縮してつくられる固形燃料としてのペレットは大きな付加価値がつく。 現在、廃材の利用率は78パーセントだが、90パーセントが目標だというからすごい。

  最近では、温水プールや農家のビニールハウスをはじめ、大型施設の空調にも活用されてきた。

  おもしろい取組が、飼い猫のトイレ用猫砂だ。独自の技術開発で消臭抗菌効果もある。使用後は土に戻したり、可燃ゴミとしても処理できる。
  ペットブームも手伝い、ヒット商品になっているという。

  真庭市は、本道同様に酪農地帯も抱えている。家畜排泄物の堆肥化も重要な事業だ。その他にも、檜の葉を蒸留し、蒸気を冷却したあとに水分を取り除いてつくる檜オイルや、プラスチックに似た素材としての木質プラスチックなど多彩な取組がめだつ。おもしろいものではコンクリにチップを混ぜてつくる木片コンクリート。放射熱をやわらげる舗装材として今後、ヒートアイランド対策にも効果を発揮しそうだ。

  当然、バイオエタノール、バイオディーゼル、はもとより発電も行っていることは言うまでもない。

  説明を受けた施設の隣にあった、かつての小学校。10年ほどまえまでは実際に学校として使われていた。林業のまちだけあって、古いけれどしっかりしたものだ。現在は市の施設として、各種団体などの活動の場になっている。

  実はこの学校、映画三丁目の夕日のロケ舞台として使われたものである。



銘建工業(岡山県真庭市)………5月28日(水)

  真庭における木質資源活用で、大きな役割を果たしているのが、地元製材企業である銘建工業だ。人工5万2千人の街で240人の従業員を抱えているのだから、その規模が想像できる。集成材では国内のトップシェアだ。写真は、身振り手振りを交えながら極めてわかりやすく事業概要を説明してくれた総務部長の長田正之さん。
  元銀行マンだけあって、先を読む力がある。「向上から出るゴミは外に出さない」が基本。全国の製材所でもっともっとペレットをつくるべきだ。化石燃料に比べるとカロリーは落ちるが、単価はそれを上回るだけ安い。しかも環境対策につながるのだから。

  ペレットを製造している企業は全国で50社ほど。全部合わせて3万トンの生産高だが、なんとその半分を同社が担っていると言うから驚く。

  自社工場の電力はすべてまかなっている。さらに2003年4月からはRPS法施行に伴って、余剰電力も売電している。
  木質バイオマス利活用例としては、木材乾燥、向上暖房、ペレットストーブ、温水ボイラー、発電などだ。日本はその70パーセントが森林である。化石燃料と違い、木は燃やしても自分が生育しているときに吸収した二酸化炭素以上は出さないため、カーボンニュートラルと言われている。温暖化対策が急がれる中、木質バイオマスはもっともっと活用されなくてならない。資源の無い国とよく言われるが、こんなに身近に豊富な資源が存在しているわけだ。

  同社のペレットは、樹皮を入れないでつくるため、色も白く、燃焼後の灰も少ない。だが長田さんは言う。「茶色くてもなんでもいいんですよ。灰が多ければ畑にまけばいいし、とにかくみんなでつくることが先です」と。

  採算は十分にとれる。ペレット工場に補助金を出すのではなく、使う現場に施設費補助をするほうが、よほど普及するとも力説されていた。

  木質ペレットにすれば大きな付加価値がつくが、工場から出る木くずの多くは燃焼されている。もちろんその熱も利用され電気がつくられている。写真は発電プラント。1時間に20トンの水を蒸発させ、約2千キロワットの電力を得る。なぜ全部ペレットにしないのかたずねた。施設が生産に間に合わないというところだろう。
  しかし長田さんは言う。「製材の方は低迷しているが、ペレットで従業員に十分給料も払える。それでも、全国の半分をうちでつくっているんです。繰り返しますが、全国あちらこちらで生産することが大事なんです」と。

  「バイオマスツアー真庭」は好評で、日帰りだけでなく、一泊してじっくり勉強していく方たちもたくさんいると聞いた。長田さんは、銘建工業の取締役総務部長というだけでなく、全国にバイオマスを普及する先駆者でもあるのだろう。





俣野川揚水発電所(鳥取県江府町)………5月28日(水)



  原子力発電は出力調整にリスクを伴うため、常に定格運転をしている。そのため、電力消費量が極端に低い夜間でも電気をつくり続けざるを得ず、結局それは捨てられてしまうことになる。
  原子力により発電されたこの夜間電力を使って、標高の低いところにつくられた下池の水を高い場所につくった上池までぽんぷアップし、需要の多い昼間に下池に落として発電する仕組みが揚水発電である。
  今回私たちが訪れたのは、中国電力が稼働する国内でも最大クラスの俣野川(またのがわ)発電所だ。30万キロの発電機が4台設置されており、最大で120万キロワットの発電能力をもつ。
  写真は、概要説明をして下さった、発電所ホールの石原稔館長。

  揚水発電は、上下2つの貯水池(ダム)が必要であり、人工的に水を上下させるため生態系への配慮もしなければならない。しかもここは、上池である土用ダムは岡山県に、下池である俣野川ダムは鳥取県にあるため、水利権や水系保全の課題も大きい。
  右の写真は、鳥取県側にある俣野川ダム。ここから下流に放流する水を有効活用するため、揚水発電所とは別に、ダム発電所もつくられている。

  例えば、景観や生態系への影響を最小限にするため、両ダム(池)間を結ぶ水路は地中につくられている。その落差は500メートルだから、結構なものだ。
  また土用ダムは岡山を流れる旭川につくられているが、ダムに上流から流れ込む水量とダムから放出される水量を変えないことも大事だ。そのため水路を行き来する水は鳥取側の日野川の水が循環されている。もちろん、最初にためられた水も、旭川の水ではなく、日野川の水をポンプアップして貯水したものと聞いた。

  右の写真は発電2号機の軸の最上部だ。このフロアーの真下に発電機本体がある。水を500メートル上の池にくみ上げるための水車と発電をするための電動機は、昼と夜で回転方向を逆にすることで、1台で2役の仕事をこなしている。

  北海道においても、北電が泊原発が発電している夜間電力を活用するための、揚水発電所を京極に建設中だ。
  水系や生態系への影響についても、今後ともチェックを続けていかなければならないことを感じさせられた視察である。
  写真は資源エネルギー課の田中主幹(中央)と釧路の橋本道議。




北条風力発電所(鳥取県北栄町)………5月28日(水)




  CO2を出し続ける化石燃料を主要なエネルギー源としてきた人類は、地球温暖化という最悪の結果を生み出してしまった。このまま温暖化が進めば、将来、この地球には人類が住めなくなってしまうとも言われているのだ。
  私たちは、一日も早く脱カーボン社会をつくりあげなくてはいけない。そのための様々な取り組みがおこなわれているが、風力発電は発電に伴う廃棄物を出さないクリーンエネルギーとして、またエネルギーの地産地消として大きな注目を集めている。
  鳥取県北栄町営の発電所を訪ねた私たちを出迎えて下さったのは、町長(右)と議会議長だった。

  鳥取県北栄町に9基の風車がリズミカルに回る。町が運営している北条砂丘風力発電所は、自治体直営では日本最大の規模を誇る。
  町長によれば、9基が作り出す電気は、一般家庭およそ6600戸分に相当する。町の戸数は5037戸(平成17年10月)だから、なんと131パーセントの電力自給率になる。

  火力から風力に切り替えたことによって、実に年間8600トンの二酸化炭素を削減したことになるからたいしたものだ。落雷もあるが避雷針がもちろんついている。しかも砂丘特有の地質のため電気も拡散しやすいようで、実被害はない。
  私の左は、日高選出の金石道議。右で資料と付き合わせながらチェックに余念がないのは、資源エネルギー課主査の今西さん。

  風力発電をおこなっている地域で問題になるのが、その音と野鳥被害である。
  そのため建設にあたっては野鳥の会などとも十分に協議を重ねており、また騒音問題も民家から離れてつくられているため起きていないようだ。公営でおこなっていることも、住民との十分なコンセンサスを得ながら取り組みを進めるということに役立っているのかもしれない。

  私たちが訪れた5号基の下には、啓発掲示板が設置されている。環境問題への取り組みは今や、自治体にとっては欠かせないアピール材料となる。
  また、このウィンドファームが町の新しい特徴となり、環境関連産業誘致も含めて、地域振興に大きく貢献することは間違いない。北栄町に生まれた子は、風車の光景を当たり前のものと受け止めて成長するだろうし、自然エネルギーの恵みもなんの違和感もなく自分の感性となっていく。町立風力発電所は、そこにあるだけで子どもたちの環境教育の素材なのだ。



京都エコエネルギー研究センター(京都市京丹後市)………5月29日(木)



  いわゆる自然エネルギーにも弱点はある。
  太陽光発電や風力発電の取り組みが全国各地で進められている。廃棄物を出さない、あるいはエネルギー源は自然界から供給されるなどその利点は大きい。だが反面、曇ってしまったらどうするのか、風が吹かなかったら発電できない、などの一種「気まぐれ」が自然エネルギーの弱点でもあったのだ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)はこの点に着目し、天候等に左右される変動電源(太陽光・風力)と、その他の新エネルギー等を適正に組み合わせることで安定的に供給できるシステムの構築に乗り出した。これが出来れば、今全国で進められている風力発電などもさらに活かされることとなる。北電が風力発電でつくった電力の買い取りに制限をかけているのも、この不確定要素があるからだ。
  そのための実証研究としてNEDOの100パーセント委託事業として実施されているのが、今回訪問した京丹後市でおこなわれている「京都エコエネルギープロジェクト」だ。
  写真右は、市の環境推進課の後藤課長補佐。

  天候に左右されない資源としては、食品系未利用資源がある。写真は発酵槽投入口。今回はモヤシの廃棄物が原料となっていた。このほかにも、コーヒーかす、ジャガイモの皮、焼酎の絞りかすなどがある。日に20トンほどの資源を投入し、さらに水分を混ぜた上で攪拌しバイオガス(ほばメタンガス)にするわけだが、発酵したガス圧で攪拌するため無動力である。

  80キロワットのガスエンジン式発電機が5台ある。燃料は、食品系未利用資源から得られたメタンガスだ。
  5台がいつもフル稼働しているわけではなく、需要の変動及び、天候に左右される自然エネルギーの供給変動を調整しながら、運転台数及び出力が決まってくる。このシステムの基本をなしている。

  メタン発酵されガスを取り出した後の残渣(ざんさ)は、脱水装置で液体と固形物に分けられる。液体物は排水処理した後、一部を出発点の薄め剤として使用し、残りは河川に放流する。
  固形物は、さらに熟成した後、堆肥として農地利用などに活用しているわけだ。

  プロジェクトシステムには、燃料電池も組み込まれていた。燃料電池は中学校で習う水の電気分解の逆の過程で電気をつくるものだ。つまりメタンから取り出した水素と空気中の酸素を結合させることにより、発電をするもので、生成物は水という、極めてクリーンな発電方法である。発電時に高温を出すため熱利用もおこなわれており、エネルギー効率はかなり高い。
  もちろん、この燃料電池発電だけでなく、本体のガスエンジン式発電から発生した熱についても、メタン発酵槽の加温、管理室の給湯や暖房などに使用されている。

  風力発電や太陽光発電を、無駄なくかつ安定的に活用するためには、天候により変動する供給能力と消費変動の制御が必要なことは、先ほど書いたとおりだ。
  1分ごとに需給バランスを計算し、5分間の受給誤差を最小化するなど、蓄積されたデータは実用化に向けて日々検証されている。
  おそらくは30年後の新エネルギー活用モデルプロジェクトになるという点で、ここでおこなわれている実証実験の数々は世界の注目を集めているに違いない。
  左手前で説明をする後藤課長補佐の後ろには、資源エネルギー課の中道主任の姿も。今回の視察が成功するため、多くの努力をされた。田中主幹、今西主査、議会の安彦主査ともども感謝したい。


エネルギー委員会道外調査参加者名簿


参加委員
氏名 会派 その他
岡田 篤 民主 委員長
藤沢 澄雄 自民 副委員長
板谷 實 自民
星野 高志 民主
日下 太朗 民主
金岩 武吉 フロンティア
戸田 芳美 公明
田村 龍治 民主
東 国幹 自民
橋本 豊行 民主
随行道職員
氏名 役職
田中 進也 経済部資源エネルギー課主幹
今西 昌志 経済部資源エネルギー課主査
中道 康信 経済部資源エネルギー課主任
安彦 秀徳 道議会事務局議事課主査



HOSHINOTAKASHI エネルギー委員会視察 2008/5/27〜29