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エネルギー委員会道外視察  2002.5/27-30

私が委員長をつとめる
道議会エネルギー委員会の視察。
3泊4日という、ちょっと長い旅になるが
好奇心旺盛に、いろんなものを
勉強してきた。


世界で初めての、廃プラスティック発電     2002/5/27

電力の自由化で、電力会社以外も、電気事業に参加できるようになった。道内第一号のサニックスエナジーは、百億円の投資をし、苫東地区に、出力7万4千キロワットの、廃プラスチック発電施設を建設中。6月1日から試運転を開始する。
星野高志
対応してくれた、久保好孝副社長(右)と。

施設見学に入る前、会議室で、およそ1時間のレクチャーを受ける。
星野高志

全員、ヘルメットに白衣という、ものものしい姿に変身して、試運転を待つばかりの施設内に向かう。

1メートル四方程度の燃料は、ベールと呼ばれる(右上)。全国に15ある前処理工場で破砕され、厳重に梱包されて海路運ばれてきたベールは、ここでさらに細かく破砕される。

これが、廃プラスティック燃料のベール。

風雨に耐えるよう、20重30重に梱包され、整然と積み上げられたベール。

発電機そのものは、一般火力とも、原子力とも大差ない。
道は、医大病院と警察本部庁舎における電力調達について、競争入札を実施することとなった。

法に基づく大口ユーザーは、札幌市でも、地下鉄を含めて2ヶ所ある。

中央制御室を見る。
国会では、「新エネ法案」が参議院で審議中だ。政府案では、廃プラを含むゴミ発電を新エネと位置付けているが、一部議員からは二酸化炭素排出問題から、反対も出ている。

現実に増えつづける廃プラスティックをどうするべきか、という視点にたつことが求められている。

施設を一まわりし、再び会議室で質疑。
投資額、環境問題、北電との関係、国会における新エネ法など、多岐にわたるやりとりが行われた。

写真は釣部道議、右後ろは小林胆振支庁長、左は古関資源エネルギー課長。

電力会社以外の事業者が行う発電で、7万4千キロワットの規模は、かなり大きい。

廃プラの処理、電力競争によるコスト削減、そして新エネ開発による脱原発ということからも、事業の成功が期待される。

苫東地区に今後企業立地が進めば、そこへの熱供給という新たな道も開かれるだろう。応援をしたい取組みである。

新エネ、省エネ、大阪府の場合   2002/5/28@

視察二日目、団員に疲れはみられない。精力的に今日も日程をこなそう。

右の写真は、北海道から伊丹にやってきたときのもの。

大阪府水道部(村野浄水場)の会議室で、各種環境対策を聞く。ここは、大阪市を除いた府内の41市町村に、水を卸している。施設規模は、日本最大だ。
星野高志
新エネルギー財団の会長賞を受賞した取組みの実際を学ぶ。

表に出ると、さすが大阪、夏を感じる。
星野高志
琵琶湖から流れる淀川の水を、いかにきれいにするか、しかも環境問題に十分な配慮をしながら。そこには、様々な工夫が凝らされていた。

浄水施設としては、世界有数のもの。しかし今回の視察目的は、そこに施されている太陽光発電をはじめとする、各種エネルギー問題だ。

左は石井道議。

高速道路の事故のため、到着が遅れた視察団に、簡潔でしかも丁寧な説明をしてくれる担当職員。

所用のため、今日から視察に合流した萩原道議も真剣だ。
右は原田道議。

通常、浄水は平面で行われる。村野浄水場は、敷地を有効活用するため、立体的な「階層系」施設となっている。

水位差を利用した、水位差発電施設も行われるなど、環境配慮が徹底されている。

浄水には、汚泥の発生がつきものだ。この処理には全国の浄水場が頭を悩ませている。

ここでは天然ガスによる、コジェネレーションが行われており、場内の三分の一の電気を自己生産するとともに、取り出された熱で、汚泥を乾燥させ体積を大幅に減らしている。

左が圧縮しただけの汚泥。右は発電の余熱を利用して乾燥させたもの。

浄水場にかかせない沈殿池に太陽があたると、藻が発生してしまう。これを防ぐには大きな蓋をするのが効果的だ。

ここでは、単なる蓋のかわりに太陽光発電パネルを設置した。この施設は、NEDOの補助対象となっている。

視察に随行した、経済部総務課の吉田主任と、資源エネルギー課の工藤主任。

彼らの後ろに、太陽光パネルが見える。

太陽光パネルは、可動式になっており、水槽の清掃に支障をきたさない仕組みだ。

岡田道議(左)と、中里道議。

施設の基本理念については、藤原場長自らの説明も。

党派を超えて、視察の成果を確認し合う。

市民と共働、森林発電プロジェクト  2002/5/28A

「市民の手による木質バイオマス利用の実践」を視察するのが、この地の目的。手作りの木炭自動車が見える。

手前は左から、随行している経済部の吉田主任、田中主査、そして議会調査課の生田主査。

この木質ガス自動車は、実用化をめざしたものではない。潜在的な森林エネルギーの利活用を、実際に動く自動車をつくりだすことを通じて、もう一度考え直そうという、いわばシンボル的存在だ。

ボンネットを覗き込んでいるのは、蝦名道議。

原理は極めて簡単。木炭などの森林資源は、千度以上の高温で燃焼させると、可燃性の一酸化炭素や水素ガスを発生させる。
これを取り出して、エンジンに送り込むわけだ。

木炭自動車そのものは、決して新しいものではない。

自然との共生が不可欠なこれからの時代、「温故知新」ではないが、身近な森林資源の再発見と、実用化に向けた「ヒント」ともいえる。
星野高志
左から吉野道議、加藤副委員長。

この車は、後部に牽引している木質ガス発生装置から送られてくる可燃性ガスだけでなく、ガソリンでも走れる。

いわば、手作りのハイブリッドカーなわけだ。
木炭1キロあたりで、5キロから10キロの走行が可能である。

市民参加で、森の手作り窯もつくられた。そこで出来た炭を利用して、公園内の池の水を浄化している。

滋賀県が進める「森林発電プロジェクト」には、のべ千四百人の市民が参加。市民と行政のコラボレーション(共働)の、ひとつのあり方を提案している。

森林資源は、かつてそのまま燃料として燃焼してきた。
しかし、高温燃焼させれば可燃性ガスを取り出せるし、生物化学的処理をすれば、エタノールやメタノール、いわゆるアルコールが取り出せる。

北海道でも、そうした取組みが始まっており、今後さらに促進させなければならない。

自然と人間の関係について、もう一度見直すことは、循環型社会をつくっていくうえで欠かせない。
間伐材で車を動かしたり、水を浄化させたりすることも、理屈では簡単なことだが、今の子どもたちに、その発想を促すことが大切である。

竹筒で、炊飯することも、自然教育に大きな役割を果たしている。

エネルギー問題は、環境問題でもある。

木質ガス自動車と同じ原理で可燃性ガスを抽出し、それで発電をするという「森林発電」。当システムは、すべて手作りであった。
重厚なプラントを想定していた視察団にとっては、いささか肩透かしをくった気もするが、実はここにこそ真実があるのかもしれない。

コラボレーションと自然との共生に、触れた思いがした。

世界最大の天然ガス発電  2002/5/29@

中部電力・川越発電所は、液化天然ガス(LNG)を燃料とする、世界最大の火力発電所だ。

天然ガスは、クリーンで安全なエネルギーとして知られている。

投入した燃料から、どれだけ効率よくエネルギーを取り出せるかを、数値で示したものを熱交換率という。

通常は、北電の泊原発を含めて三十数パーセントだが、当施設の三号機四号機は、48.5パーセントという驚くべき数値を誇っている。

これは、蒸気タービンで発電機を回すとともに、ガス燃焼によって出た廃熱を回収して、ふたたびガスタービンとして発電する仕組みになっているからである。

三号機四号機といっても、それぞれが、七つづつの発電機を備えており、電力需要に応じて稼働するため、極めて効率的だ。
七台全部がフル稼働すれば、170万キロワットの出力となるし、例えば夜間など、五台を止めれば、約50万キロワットになるということだ。

出力調整が簡単に出来るためで、原子力発電ではこうはいかない。

送電は地上の鉄塔を通じておこなわれているが、雷対策などから、現在地下送電線の工事も進んでいる。
星野高志

自然エネルギー問題に、大きな関心をもつ稲津道議。

燃料は、中近東、インドネシア、オーストラリアから、現地で液化したものが、写真の桟橋から搬入される。

事故は起きてはならないが、万一漏洩してもメタンを主成分とする天然ガスは、空気より軽いため地上には滞在しない。

周囲に拡散しないよう、貯蔵タンクごとに、城壁のようなコンクリートが巡らされていた。

5千枚の太陽パネル  2002/5/29A

三洋電機の大規模太陽光発電施設を見てきた。

全長315メートルの「ソーラーアーク」は、東京タワーを横にした長さだ。ここに、5.046枚の太陽電池パネルがはられている。

最大出力は630キロワットで、民家200軒分に相当する。
売電が目的ではなく、つくられた電気は、同じ敷地内にある同社の半導体工場で消費されている。

「太陽から電気が出来ることを知らない市民がまだ多い。アピールのつもりです」という。それにしては、大規模だ。

写真からも、いかに大きな施設かがうかがえる。

視察団は、まずその大きさに圧倒された。

電気は、電気事業者(北海道では北電)だけがつくって売るという時代は、確実に終わりつつある。

施設概要をスタッフが説明してくれた。

館内には、小学生を対象とした「科学館」があり、自然と太陽エネルギーに親しめるように工夫されている。

太陽エネルギーは、莫大なものだ。地球に届く量は、遠く離れているため、太陽が放射する量の22億分の1に過ぎない。

数字で比較すると、地球上の一年分の太陽エネルギーは、太陽が0.014秒に放出する量らしい。資料を見て驚くメンバー。

全国の太陽光発電施設をマップにおとしたもの。

残念ながら、北海道は全国の最低ランクだ。

太陽電池の力で、アメリカ大陸を横断したグライダーの3分の1の模型。
まず、太陽エネルギーでプロペラをまわして上昇し、その後、気流に乗って飛んだというから、自然エネルギーのシンボルのようだ。

ライト兄弟がみたら、仰天するに違いない。

寝転んだ東京タワーは、自重3千トンの代物だ。

これからの時代は、市民、企業、行政が共同で、クリーンエネルギー時代を創りあげていかなければならない。
企業の問題意識が、ビジネスにあったとしても、「環境」というキーワードを否定することは出来ないのだから。
民間企業における省エネ対策  2002/5/30

世界に通用するブランドとなった、洋食器メーカのノリタケ。
民間企業における省エネ対策の、実際を視察してきた。

当社は、創業100年の歴史をもつ。写真はかつての工場。
当時はまだ、環境や省エネといった課題は、社会問題化していなかった。

今は使われていない、昔の煙突群。
おそらく、ここからも環境に影響を与える排煙が出ていたのだろう。

省エネ対策のの概要を説明してくれた、環境管理グループリーダーの深谷さん。
このあと彼は、「当社では、4月から6月を空調禁止期間としていますので」と言いながら、上着を脱いだ。

1999年、社内(海外現地採用を含まぬ、本社採用だけで7千人)に、副社長を委員長とする「環境委員会」を設置し、2002年までの4年間で12%の省エネ計画を策定した。

社内におけるエネルギー使用実態を洗い出し、個別改善提案をまとめ、それに対する評価シートをつくり、現場ごとの「実行計画書」を策定した。

大型コンプレッサーを更新時にあわせ、小型分散化することで、必要な台数だけ稼働させたり、バルブ部分を断熱するだけで、10%省エネを実現できた。

写真は、製品を炉で焼くところ。

市場に出た自社製品の回収による、リサイクル事業も、重要な課題となっている。
珍しいものでは、エネルギーをまったく使用しないで、溶液をカクハンしたり、熱交換を可能のする「スタティック・ミキサー」という方式。パイプの中に螺旋状の羽をつけ、二種類の溶液を流し込むだけで、完全に混ざり合う仕組みだ。

視察団も最後の訪問地とあって、真剣だ。

消費者の意識が確実に進み、環境問題をおろそかにする企業は、時代から置いていかれる時代が来ていることを、感じた。

深谷リーダーと、事務打ち合わせをする加賀谷主査。

ノリタケは、創業100年を記念して、「ノリタケの森」をつくった。「自然との共生・安らぎの空間」をテーマとして、地域住民に開放しているという。

高度成長時代の発想だけでは、循環型社会の一員として生き延びていけないという自覚を、成長する民間企業に見た思いである。

以上で、今回の視察報告を終わる。取り急ぎを優先させたので、不十分なところがかなりあるが、指摘してもらえれば、さらに資料に基づき補強したい。

名古屋空港の昼食は、名物「天むすび」で締めくくった。

美味かったミャー