HOSHINOTAKASHI


冬芽(touga)


  ふと気づくと、庭のライラックの枝先に、たくさんの新芽が出来ている。春が近いから、そろそろ準備をしているのかと思いがちだが、実は違う。彼らは去年の秋、葉を落とした直後から、次の春に備え始めていたのである。厳しい雪の中では出来ない作業を、あらかじめしっかりとしていたのだ。いわゆる「冬芽」と呼ばれている。
 
  雪など見たことのない南国の人が突然、札幌の冬に投げ出されたら、多分、死ぬだろう。しかし北海道人は、氷点下何十度の冬を、毎年毎年乗り切っている。冬が怖いのではない。十分な準備をしないで迎える冬こそが恐ろしいのだ(「何言ってるの。準備をするのはいつも私でしょ」という妻の言葉が聞こえてきそうだが…)。

  解散総選挙は近い。無名の新人・石田ゆき子を、公認候補とする民主党にとって、厳しい闘いになるだろう。しかし問題は、「勝つか負けるか」ではない。「勝つために何を準備するか」である。

  ところで、毎年淋しくなる私の頭にも、「冬芽」があればいいのになー。


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