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音の出ないオルゴール(2001.1/9) |
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植えたときには、一メートルに満たなかった庭の桧葉(ひば)が、二階の屋根を越えようとしている。
久しぶりに重たい雪が降った。枝たちには、それぞれたっぷりの雪が乗っており、みんな今にも折れそうにしなっている。
ベランダから、竹竿で雪を払ってあげようとしたその瞬間、風だろうか、何かの拍子でひと固まりの雪が落ちた。重しを失った一本の細い枝が、激しく跳ね上がる。するとどうだ、振動が伝わったのだろう、合図でもしたかのように、次々と、あちこちで枝が跳ね上がる。
まるで、音の出ないオルゴールを聴いているような光景だ。ちょっと大げさに言えば、庭に自然の力を見た感じでもある。
北海道の先住民族アイヌは、自然と一体となって生きてきた。すべてのものに神が宿るという独自の宗教観にもとづく生き方なのだろう。
環境の時代と言われる二十一世紀に、彼らから学ぶものは多い。
一昨日、札幌市長のある挨拶に対して、ウタリ協会から抗議の声が出ている。誤解があるとすれば、解かなければならないだろう。
二十世紀のうちに、旧土人法が廃止され、アイヌ新法が制定されたことの意義は大きい。しかしその中身はまだ、「伝統的文化の保護」にとどまっている気がする。
大切なのは、日本は多民族国家であるという観点に立ち、かつて差別と抑圧にさらされたアイヌの人々の人権をしっかりと確立することだ。
二十一世紀は、「国家を越え、民族を越えた共生の時代」と言われるが、まず、国内における民族の共生をしっかりと実現しなければならないと思うからだ。
さて、桧葉とは違った方法で風雪に耐えている樹木も多い。枝が密生しているポプラは、風の抵抗が大きい。幹までも倒れそうな強風の時、彼らは自らの枝を折り、災害から身を守ると聞いた。
桧葉のしなやかさと、ポプラのしたたかさ。見事なまでの、自然界の姿と言える。
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