HOSHINOTAKASHI


客を待つネズミたち (2001.6/2) 


 ネズミを見る機会が、最近減ったような気がする。

 家のつくりがしっかりしたためだろう、ネズミが天井裏を駆けまわったり、夜寝ている間に足の指をかじられたりという話は、ほとんど聞かない。

 ひと昔前は、ネズミをとらなくなった猫をなげいたり、ネズミ捕りにかかった獲物を川で処分したという話題が、井戸端会議によくでてきていた。実際、僕が小さい頃住んでいた長屋のつきあたりには、井戸があって、そこで話だけではなく、網の中でキーキーないている哀れな姿を何度か見たことがある。

 ネズミは、ペストやエキノコックスの運び人ということで、ずい分嫌われてきた。むこうも人間を恐れているから、たまたま出くわしても、さっさと隠れてしまう。そこで密室、たとえばエレベーターなんかで出会おうものなら、両者パニックに陥ることとなる。

 だが反面、「ミッキーマウス」「トムとジェリー」「ネズミ小僧」など、ネズミは意外と親しみを込められて物語りに登場したりもしている。
 どことなく憎めないイタズラ屋というイメージがあるからだろう。

 さて、六月一日、北海道立NPO促進センターがオープンした。
 多様化する価値観にもとづく市民活動を、道としてサポートする拠点だという。その趣旨はおおいに結構だし、応援もしたい。
 だけど、どこかしっくりこないものがある。オープニングセレモニーのため、机やイスが片付けられているためか、やけに広い部屋という印象だが、ここがどうやって使われるのかという具体的イメージが湧かないのである。

 部屋のすみにある机の上には、数台のパソコンがあり、当センターのホームページが表示されていた。このページはなかなか良くできていて、道内千五百の市民団体の概要がデータベース化されている。
 でも考えてみれば、あれを見るのは自宅でいいはずだ。

 運営を工夫しないと、あっという間に、公立無料のインターネットカフェになったりして…。「交流推進コーナー」という待合室もあることだし。

 数匹のネズミ、いやマウスが、明日からのお客さんを待ち構えている。


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