HOSHINOTAKASHI


はずれないバスタオル (2002.10/3)


 風呂からあがってバスタオルを腰に巻く。

 ビールより牛乳が美味しいと思うのは、この瞬間だ。ひと息に飲むと、プクッとおなかが出て、ちょうどよかったバスタオルの締め具合がきつくなる。だからと言って緩めてしまえば、立って歩き出した時に、パラっと取れそうで怖い。もっとも、番台のおばちゃんは、いつものように熟睡しているのだが。

 くるっと巻いて、バスタオルの端を中に折り込む留め方だと、少しきつめにしないと、とれてしまう。
 やり方を変えて、バナナの皮をむくように、内側から、全体を一折する。ちょうどベルトを締めた格好である。これだと、緩めにとめていても決してはずれることはない。
 つまり、バスタオル自体の重さで下がろうとすればするほど、その力は、折り返されたベルトを締める方向に作用するわけだ。
最近の女の子のズボンが、腰骨で止められている姿に似ているかもしれない。

 近所のDPE店が、ある日突然、本社からの指示で閉店した。離職した店長と、その上司は、警備会社に勤めながら、再生の準備を進めてきたが、地域に密着した店として、まもなく復活しようとしている。
 東京の本社では、できなかった生き残りを、リストラされたアイディア店長が、見事にやってのける。小気味いい限りだ。

 はずれそうで、はずれないバスタオル。しかも無理に取ろうとすれば、より強くしまっていく。ちょっとした発想の裏返しが、明暗を分ける。
 つぶれそうで、つぶれない店。彼ならやってのけるに違いない。

 この店長とは、バスタオルを巻きながら、冷たいビールでも飲んでみたいものだ。


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