HOSHINOTAKASHI


妖しい輝き (2002.2/11) 


 後ろから救急車が近づいてくる。

 ピポピポと、せかすような高音で、早いテンポのサイレンがどんどん迫る。あわてて路肩に寄る僕の車をかすめて、通り過ぎた救急車から聞こえてくるサイレンは、一変して穏やかになった。
 今度のそれは、ピーポーピーポーと、まるで「よけてくれて、ありがとう」とでも言っているように、低音で、ゆったりとした調べに変わっている。

 いわゆるドップラー効果というやつだ。

 空気を振るわせることで、つまりそこに波をつくることで、音は相手に伝わる。しかし音は、それを発信した者の意図を、そのまま相手に届けるとは限らない。風の流れや気温によっても違って聞こえてくる。
 発信者が、近づくときと遠ざかる時で、音の波長が変わり、違って聞こえるのがドップラー効果だ。

 アフガン復興会議へのNGO参加問題で、鈴木宗男氏が圧力をかけたかどうかで国会が揺れた。「言った言わない」という子どもの喧嘩状態になったまま、田中外務大臣が更迭され、鈴木氏も役職を辞任することで、結末を迎えた。
 結局、真実はうやむやのままである。機密費の扱いをはじめ、隠ぺい体質のある外務省を変えようとした、田中真紀子氏の意図は、残念ながら、途中で挫折した。

 小泉首相に、「女の武器」と言われた田中氏の涙は、それほど計算されたものではなく、人間なら誰もが経験する、思わず流した悔し涙だったに違いない。
 だからこそ、キラリと光ったのである。

 ところで、光にもドップラー効果はある。
 光の速さに近いスピードで追ってくる白バイ。僕に届く光の波長は、押しつぶされたように短くなり、従ってドライバーの顔は、紅く染まって見えるに違いない。

 逆に、通り過ぎ遠ざかっていく白バイの背から出る光は、ゴムひものように引き延ばされた長い波長となり、青白く、妖しく輝くことだろう。


HOSHINOTAKASHI