HOSHINOTAKASHI


酔いどれ探偵 〜都築道夫(新潮文庫)


  一日二十四時間のうち、二十六時間も飲んだくれているルンペンが、ニューヨークの裏街に住んでいます。クオート・ギャロン。
  彼はかつて、ニューヨーク屈指の名探偵でした。日本で言えばさしずめ明智小五郎か金田一耕助といったところでしょう。そんなクオート・ギャロンにある日、人生最大の事件が襲いかかります。出張から帰ると、妻が事務所の部下に寝取られていたのです。
  激怒した彼は、暴行障害事件を起こし、探偵許可証を召し上げられちゃったんです。可愛そうに。

  以来、飲んだくれ人生がはじまります。
  それなのに、飲んべルンペンのところには事件解決の依頼が後を絶たないのですから、名声とはすごいものです。

  いかにもアメリカっぽい洒落が随所にちりばめられている点も、読みどころのひとつ。かなりハードボイルドな仕上げであるにもかかわらず、血なまぐささがみじんも感じられないのも、気に入りました。

  探偵物としては、いささか論理性に欠けるという欠点もありますが、主人公の人間くささを上手に描き出すことで、そんな欠点もみごとにカバーしている楽しい出来です。

  「酔いどれ探偵、読んだ?」が、すすきのの流行語になるかもしれません。


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