HOSHINOTAKASHI


筒井康隆の世界 


  筒井康隆の本って読んだことありますか。読んでいる自分が狂ったのか、書いている筒井が変なのか、それとも世の中みんなでたらめなのか。おそらく、その全部ではないでしょうか。

  彼は小学校の的、IQ187の天才少年でした。31歳で職業作家になって以来、次々に作品を世に出し、頭のカチンコチンな他の作家たちを恐怖と混乱のどん底に、突き落としたのです。

  筒井の小説に共通しているのは、なんといってもパロディ精神です。それも徹底的にやります。権威あるはずのものが、みーんなハチャメチャにやられるから、何とも言えません。警察も、弁護士も、政治家も、医者も…みんな狂人になってしまうのです。
  そして、現実にはあり得ないことが、早いテンポで、本当に早いテンポで次からつぎへと展開されていきます。そのうちに読者は完全に彼の世界のとりこになって、いつの間にか現実におこっていることはみんなウソで、筒井の世界こそが本物なんだと思うようになるのです。

  でたらめな私生活を送っているくせに、したり顔で大演説をしている人間が、ふと、昨夜の情事を思い出してしまいます。そのうち、すっかりその気になって、真っ裸となり、最前列で演説を聞いてる男にキスをしちゃったりして…。

  筒井康隆は、人間の深層心理など問題にしません。まるでドタバタ喜劇を見ているようなんです。そんな手法で世界を手玉に取ってしまいます。徹底的に非政治的だからこそ、徹底的に革命的な作家といえるでしょう。

  第一回目から失敗してしまいました。「書評」を書くつもりが、「作家評」になってしまいました。
  とりあえず、「俺の血は他人の血」などおすすめします。


HOSHINOTAKASHI