HOSHINOTAKASHI


ホロスコープ物語 〜森瑶子(新潮文庫)


  「人は女に生まれない。女になるのだ」〜ボーヴォワール著「第二の性」の冒頭です。ボーヴォワールといえば、二十世紀が生んだ最大の知識人・サルトルの愛人だったことは有名です。
  彼女はこの本の中で、女の不可思議・グロテスク・魅力、つまり女そのものを他に例をみないほど徹底的に解明していきます。
  他方、彼女の愛人だったサルトルは、その哲学の中軸に「愛は存在し得ない」を据えているのです。

  僕らには、とうてい理解できない「二大精神の葛藤」といったところでしょう。

  さて、今回は「ボーヴォワールなんて面倒くさい」という僕ら凡人のためにこそ書かれたような本についてです。 森瑶子の「ホロスコープ物語」というちょっと少女趣味的な星座占い。

  牡羊座の女にはじまり、魚座の女まで、全部で十二人のヒロインが登場します。それぞれの星座がもつ性質や性格を典型的といえるほど兼ね備えた、十二人の独身女性が、愛とセックスに悩み続ける様を、次々と描写していきます。

  女の精神的自立を、官能的に描くことにかけては、他の追随をゆるさない森瑶子。日本のボーヴォワールと、誰かがどこかで評していた森瑶子。

  この本には、男と女の当事者しか登場しません。映画化したら何と安上がりに出来ることでしょうか。
  一服する代わりに読み切ってしまえる、面白い作品。


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